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体調を崩して会社を辞めたあと、失業保険(雇用保険の基本手当)をもらえる期間は、原則として離職日の翌日から1年です。その1年のうちに引き続き30日以上働けない日があるなら、ハローワークに申請して、働けない日数を受給期間に足せます。足せる日数は最大3年分で、受給期間は最長で離職日の翌日から4年以内になります。
申請をしないまま「病院に通って、元気になってから手続きしよう」と待つと、1年が過ぎたところで、給付日数が残っていても受け取れなくなります。逆に、延長の申請をしておけば、治ってから落ち着いて失業保険を使えます。この記事は、退職後に体調が戻らず、求職活動を始められない人が、いつ・どこで・何を出せばいいかを順に追えるように書きました。
もうひとつ先に押さえておく点があります。延長で増えるのは「受け取れる期間」で、「もらえる日数」ではありません。日数は、勤めた年数や退職の理由で決まったままです。
延長が使えるのは「引き続き30日以上、働けない日がある」とき
失業保険は、「働く意思があり、いつでも就職できる状態なのに仕事に就けない人」のための給付です。診断書が出るほど体調が悪い時期は、この「いつでも就職できる」に当たらないため、その期間は失業保険を受け取れません。受け取れない期間のせいで1年の枠が削られるのを防ぐ仕組みが、受給期間の延長です。
東京都の公的資料(厚生労働省・東京労働局・ハローワーク発行の案内を参照したもの)には、延長の対象になる理由として、次が挙げられています。
- 病気
- けが
- 親族の介護
- 妊娠、出産、育児
- 子の看護
- 一定のボランティア等
条件は「引き続き30日以上就職できない日がある」ことです。30日ちょうどでなく、30日以上続くことが目安になります。ハラスメントや過重労働で心身の調子を崩した場合も、「病気」として医師が働けないと判断しているなら、延長の対象になる可能性があります。当てはまるかどうかの最終判断はハローワークが行うので、迷う段階で窓口に聞くのが確実です。
30日という日数は、診察で「しばらく休養が必要」と言われた日から数えるイメージで考えると、手続きの見通しが立てやすくなります。ただし、どの日から数えるか、診断書にどう書かれていれば足りるかは、窓口によって確認する項目が変わることがあります。
延長で変わるもの、変わらないもの
延長の効果を、具体的な数字で確かめます。たとえば、自己都合で退職し、雇用保険に5年入っていた65歳未満の人は、所定給付日数が90日です(東京都の資料に載っている表で、算定基礎期間が10年未満の自己都合退職は90日)。
退職後すぐに体調を崩し、半年間働けなかったとします。何もしなければ、受給期間は離職日の翌日から1年のままで、その1年のうち、働けなかった半年は失業保険を受け取れません。残る半年で手続きと待期、給付制限を終えて認定を受けていくことになり、90日分を使い切れない可能性が出てきます。
延長の申請をしていれば、受給期間に「働けなかった半年」が足されます。1年が1年半になり、治ってから90日分を受けられる余裕が生まれます。
変わらないものは次のとおりです。
- もらえる日数(上の例なら90日のまま)
- 1日あたりの金額の決まり方(離職前6か月に支払われた賃金の合計を180で割った額の、およそ45%〜80%)
- 自己都合の場合に、待期の7日間に加えて給付制限がかかること
延長すると増える、と誤解されやすいのは「期間」と「日数」の違いです。ここを取り違えると、「延長したのに少ない」という不満につながります。
申請の時期|いつまでに、どこへ
厚生労働省のリーフレット(2017年4月1日の変更を知らせるもの)には、申請の時期が次のように書かれています。
- 原則は、引き続き30日以上職業に就けなくなった日の翌日以降、早期に申請する
- 2017年4月1日の変更で、延長後の受給期間の最後の日までなら申請できる
- ただし、申請が遅いと、延長しても所定給付日数のすべてを受けられない可能性がある
以前は「働けなくなって30日たった翌日から1か月以内」という期限があり、これが過ぎると延長できませんでした。今は期限が延びたため、「間に合わなかった」と諦めなくて済む場面が増えています。一方で、遅く申請すると、残りの受給期間が短くなります。リーフレットの図でも、「延長後の期間の終わりぎわで申請して、すぐ受給手続きに入ると、残っている期間が3か月しかない」例が示されています。
申請先は、住所地を管轄するハローワークです。北海道のハローワークのページには、申請に使う書類として次の2点が載っています。
- 受給期間延長申請書
- 受給資格者証(離職票を出して受給資格が決まっていれば、そのときに渡されるもの)
理由を示す書類として、診断書や母子手帳などが挙げられています。このページの記載は2017年のもので、必要書類は窓口の運用で変わることがあります。診断書を取りに行く前に、ハローワークに電話して「どんな書類が必要か」を聞いておくと、二度手間を避けられます。
受給資格者証は、離職票を持って求職の申込みをしたあとに交付されます。退職した直後で、まだ離職票も受け取っていない、あるいは離職票は届いたがハローワークに行けていない、という場合は、まず離職票を持ってハローワークに行くか、電話で状況を伝える形になります。離職票が届かないときは、離職票が届かないときの動き方が参考になります。
ハローワークに行けないほど具合が悪いとき
「体調が悪くてハローワークに行けない。延長の手続きも自分でやらないといけないのか」という疑問は、東京都の資料のQ&Aにそのまま載っています。答えは、ご本人が手続きできない場合は、代理人が行うか、郵送でも手続きできるというものです。詳しい方法はハローワークに確認するよう添えられています。
電話で伝えるときは、次の内容をメモしておくと話が早く進みます。
- 退職した日と、勤めていた会社名
- 離職票が手元にあるかどうか
- 働けない理由(病気・けがなど)と、通院している医療機関の有無
- 本人が窓口に行けない状況であること、代理人の候補(家族など)がいること
電話での言い方の例です。
「◯月◯日に退職しました。体調を崩していて、医師から当分は働けないと言われています。失業保険の受給期間の延長を申請したいのですが、自分で窓口に行けません。代理人や郵送で手続きできますか」
この一文を伝えたうえで、「どの書類を、誰の名前で、どこに送ればいいか」を聞き取って、メモを残してください。
傷病手当金とは同時に受け取れない|順番を決める
体調を崩して退職した人が、同時に気にするのが健康保険の傷病手当金です。東京都の資料のQ&Aには、傷病手当金は「働くことができないと医師が証明した場合」に受給でき、失業給付の要件の「いつでも就職できる能力」には健康状態も含まれるため、同時には受給できないと書かれています。
この二つは、次のような順番で使い分けることになります。
- 働けない間は、受給条件を満たしていれば傷病手当金を受ける
- 同じ期間に失業保険の受給期間延長を申請して、1年の枠が消えないようにする
- 働ける状態になったら、傷病手当金を終えて、ハローワークで求職の申込みをし、失業保険の手続きに入る
傷病手当金は、退職後も続けて受け取るには条件があり、退職日に出勤していたかどうかなどで結果が変わります。条件の確認は、ハラスメントで体調を崩して辞めるとき、傷病手当金は退職後も受け取れる?で整理しています。退職日をまだ決めていない段階なら、先にこちらを読んでください。退職日の決め方で、受け取れる額が変わる場合があります。
延長が「向いていないかもしれない」ケース
延長の申請は、誰にでもおすすめできるわけではありません。次のような場合は、先に窓口で確認したほうがいい場面です。
数日だけ休めば働ける見込みのとき
30日未満で働ける状態に戻る見込みなら、延長の対象にはなりません。この場合は、体調が整い次第、通常どおり離職票を持って求職の申込みをします。
休職期間が満了して退職になったとき
病気で休職していて、期間が満了しても復職できず退職になるケースでは、退職の理由の扱いで受給の条件が変わります。東京都の資料では、休職期間満了で自然退職になるのか、解雇になるのかは勤め先の就業規則の定め次第とされ、「休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき」などの定めがあれば自然退職になり、特定受給資格者にはならないと書かれています。就業規則の退職の項目を、退職前に読んでおいてください。
ハラスメントが原因で退職するとき
ハラスメントが原因の退職が、離職票上どの理由になるかは、受給の開始時期や日数に関わります。延長の申請と合わせて、離職票の記載を確認する流れで動くと抜けがありません。離職票の「自己都合」の欄の見方は、ハラスメントで辞めたら会社都合になる?離職票の「自己都合」で失敗しない3つの注意点で扱っています。
注意点|延長の手続きで見落としやすいこと
- 期間が1年のままだと勘違いして放置する。退職後に体調が悪い状態が続いても、延長の申請をしなければ、受給期間は離職日の翌日から1年のままです。「治ったら手続きしよう」と待っているうちに、1年が過ぎる人がいます。
- 「申請が遅くても大丈夫」と受け取って先延ばしにする。期限が延びたことは、いつ申請しても同じ結果になるという意味ではありません。厚労省のリーフレットも、遅い申請では所定給付日数の全部を受けられない可能性があると注意しています。
- 診断書の中身を確認しないまま出す。診断書に、働けない期間の見込みが書かれていないと、ハローワークから追加で求められることがあります。受け取るときに、書かれている期間と、ハローワークに出す用途を医療機関に伝えておくと、書き直しを減らせます。
- 延長した期間が終わったあとの手続きを忘れる。延長は「受け取れる期間を延ばす」だけで、働けるようになったら自分でハローワークに行き、求職の申込みと受給の手続きを始める必要があります。
- 延長の申請と、傷病手当金の申請を同じ窓口だと思い込む。延長はハローワーク、傷病手当金は加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合など)です。窓口が違い、それぞれに必要な書類があります。
結論から動くための手順
体調が悪い中で、すべてを一度にこなす必要はありません。優先順位を付けて、できるところから進めれば足ります。
退職前にできること
- 通院している医療機関に、診断書を出してもらえるかを聞いておく
- 退職日を決める前に、傷病手当金の条件を確認する
- 会社に、離職票の発行時期と、届く先を確認する
退職後、離職票が届いたら
- ハローワークに電話し、窓口に行けるか、代理人や郵送でできるかを相談する
- 受給期間延長申請書、受給資格者証(または離職票)、診断書など、指示された書類を用意する
- 書類の提出日と、窓口で言われたことをメモに残す
働けるようになったら
- 傷病手当金を受けている場合は、受け取りの終わりを確認する
- ハローワークで求職の申込みをし、失業保険の受給の流れに入る
退職後の手続き全体の順番を一通り見たいときは、退職するときにやること一覧にまとめています。失業保険の基本的な流れ(待期、給付制限、認定日)は、失業保険(基本手当)はいつから・いくらもらえる?が詳しいです。
ハローワークへ出す連絡文のメモ(郵送や代理人に頼むとき)
家族に代理を頼む、書類を郵送するといった場面では、状況を一枚のメモにまとめて渡すと、窓口とのやり取りが減ります。次は、メモの書き方の例です。
【受給期間延長の手続きについて】
氏名:◯◯◯◯ 生年月日:◯年◯月◯日
退職した会社名:株式会社◯◯◯◯ 退職日:◯年◯月◯日
働けない理由:病気のため、医師から◯か月ほど休養が必要と言われている
本人が窓口に行けない理由:通院と自宅療養が続いているため
代理人:◯◯(続柄:◯◯)
お願いしたいこと:受給期間延長の申請方法(代理人または郵送)と、必要書類の案内
書類の提出先と書式は、ハローワークによって運用が異なる場合があります。メモは、窓口で聞いた内容を書き足していく控えとしても使えます。
退職の前後で一人で抱えきれないとき
体調を崩している最中は、会社への連絡も、制度の確認も、すべて負担になります。退職の伝え方で揉めている、離職票を出してくれない、辞めたいと言ったら嫌がらせが始まった、といった状況が重なると、延長の手続き以前のところで動けなくなる人もいます。
そのようなときは、一人で抱えずに、弁護士への無料相談も選択肢です。会社との退職のやり取りは、弁護士が間に入ることで、本人が直接やり取りする場面を減らせる場合があります。結果は、契約内容や証拠の状況で変わります。
手続きの窓口(ハローワーク、健康保険、会社)と、体調の回復を並行させるのは大変です。優先するのは、まず体を休めることと、延長の申請の期限を逃さないことの二つです。ほかの手続きは、そのあとに順に片づければ間に合います。
よくある疑問を3つ
延長を申請したら、アルバイトや短時間の仕事もできなくなる?
延長の対象は「引き続き30日以上、職業に就けない日がある」ことが前提なので、働ける状態であれば、延長の理由そのものが成り立たなくなります。体調の回復に合わせて少し働いてみたい場合は、働き始める前にハローワークへ連絡し、申請済みの延長や失業保険の扱いがどうなるかを聞いてください。失業保険をもらいながらの就労の扱いは、失業保険をもらいながらアルバイトしてもいい?にまとめています。
退職してから半年以上たっていても、延長は間に合う?
厚生労働省のリーフレットによると、申請は延長後の受給期間の最後の日までできます。半年たっていても、延長の対象になる状況なら窓口で相談する価値があります。ただし、遅い申請は残りの期間を短くします。具体的に何日分が受け取れるかは、離職日、働けなかった日数、所定給付日数で決まるので、窓口で日付を示して聞くのが確実です。
病気ではなく、家族の介護で働けないときも同じ?
東京都の資料では、親族の介護も延長の理由に挙げられています。診断書の代わりに何を出すかは、状況ごとに変わります。介護の場合も、まず電話で理由を伝え、必要な書類を聞き取ってください。
やることチェックリスト
- 働けない状態が引き続き30日以上になりそうかを、医師に確認した
- 診断書を出してもらえるか、医療機関に聞いた
- 傷病手当金の条件を、退職日を決める前に確認した
- 離職票が手元にある(なければ会社に請求した)
- ハローワークに電話し、窓口・代理人・郵送のどれで申請するかを決めた
- 受給期間延長申請書と、指示された書類をそろえた
- 申請の日付と、窓口で聞いた内容をメモに残した
- 働けるようになったら、求職の申込みをする予定を決めた
まとめ
体調を崩して辞めたあとの失業保険は、離職日の翌日から1年が原則の期限です。引き続き30日以上働けない日があるなら、ハローワークに受給期間延長を申請して、働けない日数を足せます。最長は離職日の翌日から4年以内です。
申請は、働けない状態が30日続いた翌日以降なるべく早く出すのが原則で、延長後の受給期間の最終日までなら受け付けられます。ただし遅くなるほど、残る期間が短くなります。窓口に行けないときは、代理人や郵送でも手続きできます。傷病手当金とは同時に受け取れないので、働けない間は傷病手当金、働けるようになったら失業保険、という順番で考えてください。
今日できる一つは、ハローワークへの電話です。上の電話の例をそのまま読み上げて、必要書類と申請方法を聞き取るところから始めてください。
確認した公的情報
制度の細かい取り扱い(必要書類、郵送の方法など)は、窓口によって異なることがあります。申請の前に、管轄のハローワークに確認してください。






