年内に退職すると年末調整はどうなる?確定申告が必要なケースと、辞める日から1か月の動き方を時系列で整理

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年内に退職して、そのまま年を越す場合、会社の年末調整は受けられません。その結果、給与から天引きされた所得税が多すぎる状態のまま残り、自分で確定申告(還付申告)をして取り戻す形になることがあります。同じ年のうちに再就職した場合は、原則として新しい勤務先が前の会社の給与も含めて年末調整をするため、自分で申告する必要はなくなります。

国税庁のタックスアンサー(No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」)にも、この二つの流れが書かれています。還付を受けるための申告は、退職した年の翌年1月1日から5年間提出できます。すぐに慌てる必要はありませんが、書類をなくしてから探すと手間が増えるので、辞める前後に動いておくと楽になります。

この記事では、「今日」「明日」「1週間後」「1か月後」の順に、年内退職の人がやることを並べます。11月に入って「年内で辞めよう」と考えはじめた人、12月の月末で辞める予定の人は、自分の退職日に当てはめて読んでください。

先に整理:年末調整とは何か、辞めると何が起きるか

毎月の給与から引かれる所得税は、「この人はこれくらいの年収になるだろう」という見込みで計算された概算の金額です。年末調整は、その年の最終的な給与の合計と、扶養や保険料の控除を反映して、引かれすぎた分を戻したり、足りない分を追加で払ったりする精算のことです。多くの会社員は、これで税金の手続きが終わるので、確定申告をしたことがありません。

年の途中で辞めて、その年に再就職しない場合は、この精算をしてくれる会社がなくなります。国税庁のページでも、年の途中で退職すると所得税が納め過ぎになる場合があり、再就職しないときは還付を受けるために確定申告が必要になる、という趣旨が示されています。

「納め過ぎになる場合がある」という書き方なのは、人によって金額が違うからです。退職までの給与の額、扶養家族の有無、年内に払った保険料などで変わります。必ず戻ってくるとは限らないので、「戻る可能性があるから、手続きの入り口だけ押さえておく」くらいの構えで十分です。

今日:退職日と「その年に再就職するか」を決める

年内退職で最初に決めるのは、実は税金の書類ではありません。退職日はいつか、その年のうちに次の会社で給与を受け取る見込みがあるかの二つです。これで、その後の動き方が分かれます。

分かれ道は「同じ年に再就職するか」

  • 同じ年のうちに再就職して給与が出る見込みがある:新しい勤務先が年末調整をしてくれる。前の会社の源泉徴収票を、新しい勤務先に出す
  • 年内は無職のまま:自分で確定申告をして、納め過ぎを取り戻す。前の会社の源泉徴収票が申告の基本資料になる

たとえば、12月20日付で退職して、翌年1月5日から新しい職場で働く場合は、後者です。新しい職場の年末調整は、その年の給与を支払ってはじめて対象になるので、前の年分の精算は自分でする側に回ります。「年をまたぐだけで流れが変わる」点は、見落としやすいところです。

退職日そのものを決めるときの注意

退職日は、税金だけでなく社会保険料にも関わります。月末ちょうどに辞めるか、月末の手前で辞めるかで、健康保険・厚生年金の扱いが変わるためです。この点は別の記事にまとめているので、日付を迷っているときは先にそちらを読むと整理しやすくなります。

今日やることは、手帳かスマホのメモに次の2行を書くだけです。

  1. 退職予定日:○月○日
  2. 年内の再就職:決まっている/未定/しない

明日:会社に頼むことを3つ、まとめて伝える

退職日が決まったら、人事や総務、経理の担当者に、税金まわりで頼みたいことをまとめて伝えます。一つずつ小出しにすると、そのたびに「担当が違う」と言われて時間がかかります。頼むのは次の3つです。

1. 源泉徴収票を発行してもらう時期の確認

源泉徴収票は、その年に会社が支払った給与の合計と、引いた所得税の額が書かれた書類です。確定申告でも、再就職先の年末調整でも使います。退職後、おおむね1か月以内に交付されるのが一般的ですが、会社によって時期は違います。いつ、どこに送ってもらえるのかを、辞める前に聞いておきます。

メールで頼むなら、たとえば次のような書き方です。

「お疲れさまです。○月○日付で退職する○○です。退職後の手続きについて、2点お願いがあります。①源泉徴収票の発行時期と送付方法を教えてください。②送付先は、退職後の住所(○○県○○市……)にしてください。お忙しいところ恐縮ですが、ご確認をお願いします。」

用件を2点に絞り、送付先の住所を明記するのが要点です。住所を書き忘れると、退職後に連絡がつきにくくなります。

2. 退職後の連絡先を伝える

引っ越す予定がある人は、新しい住所が決まっているかどうかで動き方が変わります。住民票を移す予定があるなら、移したあとの住所を伝えます。まだ決まっていなければ、「住所が決まったらメールで連絡する」と書き添えておきます。

3. 年内に払った保険料の書類があるかどうか

会社に頼む必要があるわけではありませんが、年内に自分で払った保険料の書類は、確定申告で使います。生命保険料や個人年金保険料の控除証明書は、秋から年末にかけて保険会社から届きます。届いたら、捨てずに一か所へまとめておきます。

なお、会社が退職を認めない、書類を出し渋るといった状況になっているときは、まず次の記事を見てください。源泉徴収票が届かない場合の催促文例も載せています。

1週間後:退職後、最初の週に済ませること

退職日を過ぎて最初の1週間は、税金そのものより、そのあとの生活の土台になる手続きを優先します。税金の還付は急ぎではないのに対して、保険と年金には期限があるからです。

健康保険と年金を先に済ませる

退職すると、会社の健康保険と厚生年金の資格がなくなります。次のどれにするかを決めて、手続きに進みます。

  • 健康保険:国民健康保険、会社の健康保険の任意継続、家族の扶養に入る、のいずれか
  • 年金:国民年金への切り替え(原則、退職日の翌日から14日以内の手続きという目安があります)

どれを選ぶかで毎月の負担が大きく変わります。比べ方は、次の記事で場面別にまとめています。

ここで払った保険料が、あとで税金に効く

国税庁のタックスアンサー(No.1130「社会保険料控除」)によると、国民健康保険と国民年金の保険料は、どちらも社会保険料控除の対象です。控除されるのは、その年に実際に支払った金額(または給与・年金から天引きされた金額)の全額です。

つまり、年内に辞めて国民健康保険や国民年金の保険料を払いはじめた人は、その支払いが確定申告で所得から差し引かれ、税金の計算に反映されます。国民年金の保険料については、支払った金額を示す証明書類を申告書に添付するか、申告のときに示す必要があるとされています。年金事務所などから届く控除証明書は、封筒ごととっておきます。

なお、同じページには、令和8年分以後(令和9年1月1日以後に申告する場合)には、証明書の添付に代えて、必要事項を記載した明細書を添付する方法も使えるという趣旨の記載があります。どちらの方法が自分に当てはまるかは、申告する時期の国税庁の案内で確認してください。

1か月後:書類がそろったら、申告するかどうかを判断する

退職から1か月ほど経つと、源泉徴収票が届いているはずです。ここで、申告が必要かどうかを次のように判断します。

パターンA:年内に再就職した

新しい勤務先に、前の会社の源泉徴収票を提出します。新しい勤務先が、前職の給与も含めて年末調整をするのが原則です。提出の時期や様式は、新しい勤務先の人事から案内があるので、それに従います。源泉徴収票を渡すのが遅れると、年末調整に間に合わず、翌年に自分で申告する手間が出てしまいます。入社したらすぐ「前職の源泉徴収票は、いつまでに出せばよいですか」と確認すると安心です。

前の会社から源泉徴収票が届かないまま新しい会社の年末調整の締め切りが近づいているときは、先に新しい会社へ事情を伝えます。「前職に請求済みで、届き次第提出する」と伝えておけば、対応を相談できます。

パターンB:年内は再就職せず、無職のまま年を越す

翌年、自分で確定申告(還付申告)をします。国税庁のページでは、申告は退職した年の翌年1月1日から5年間提出できるとされています。「いつまでにやらないと罰則」という性質のものではなく、取り戻せる権利の期間が5年あるイメージです。ただし、書類は時間が経つほど見つけにくくなるので、翌年の早い時期に済ませるほうが楽です。

申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、画面の案内に沿って入力すれば作成できます。必要なものは、おおむね次のとおりです。

  • 前の会社の源泉徴収票
  • 国民健康保険料の支払いがわかるもの(納付書の控えや通知など)
  • 国民年金保険料の控除証明書
  • 生命保険料などの控除証明書(払っている人)
  • 本人確認書類と、還付金を受け取る口座の情報

実際に何が必要かは、人によって違います。国税庁のページでも、必要な添付書類の一覧までは示されておらず、詳細は所轄の税務署に確認するよう案内されています。迷ったら、管轄の税務署に電話をして、「年の途中で退職して再就職していない」と伝えて、持ち物を聞くのが確実です。

パターンC:年内に再就職したが、年末調整の対象外になった

たとえば、新しい勤務先が年末調整の対象としない雇用形態だった、年末調整の提出期限に間に合わなかった、といったことが起こりえます。この場合も、自分で確定申告をすれば調整できる可能性があります。ただし、判断は状況によって異なるため、新しい勤務先の担当者か税務署に相談してください。

電話で税務署に聞くときの伝え方

申告が必要かどうか、何を持っていけばよいかは、自分で調べて迷うより、税務署に聞いたほうが早く片づきます。混み合う時期(2月中旬から3月中旬の申告シーズン)を避けられるなら、その前のほうが電話もつながりやすくなります。聞くときは、状況を最初にまとめて伝えます。

「○月に会社を退職しました。その年のうちには再就職しておらず、年末調整は受けていません。源泉徴収票は手元にあります。還付申告をしたいのですが、必要な書類を教えてください。」

このくらい具体的に話せば、担当者も答えやすくなります。あわせて、次の3点を聞いておくと、申告のやり直しを防げます。

  • 国民健康保険料の支払いは、どの書類で証明すればよいか
  • 国民年金保険料の控除証明書が見当たらないときは、どうすればよいか
  • 還付金は、申告からおよそどれくらいで口座に入るか

聞いた内容は、日付と担当部署の名前を添えてメモに残します。後日、内容を確認したいときに役立ちます。

注意点:年内退職で見落としやすいこと

1. 源泉徴収票を捨てない

退職時に手渡される書類の中で、一番なくしやすく、一番あとで困るのが源泉徴収票です。再発行はしてもらえますが、会社との関係がこじれていると、頼みにくくなります。届いた日に、スマホで写真を撮り、原本はクリアファイルに入れて保管します。

2. 「戻ってくるはず」と決めつけない

還付があるかどうかは、給与の額、年内の支払い、控除の内容で決まります。申告してみたら還付が少なかった、または追加の納付が出た、ということも考えられます。SNSの体験談の金額を、自分の期待額にしないほうが安全です。

3. 住民税は別の話

確定申告で戻る所得税と、住民税の請求は別の仕組みです。退職の時期によって、最後の給与や退職金から一括で引かれることもあれば、自宅に納付書が届くこともあります。年内退職でも、翌年6月ごろから住民税の通知が来る流れは変わりません。詳しくは次の記事にまとめています。

4. ハラスメントで辞める場合も、手続きは淡々と進める

職場のトラブルで急に辞めることになった人は、「もう会社と関わりたくない」という気持ちから、書類の請求を後回しにしがちです。ただ、源泉徴収票や離職票は、退職後の生活を支える書類です。連絡を取りたくないときは、メールだけで完結させる形にして、文面を短くします。やり取りが苦しいときや、会社が書類を出さないときは、一人で抱えず、弁護士への無料相談も選択肢です。

やることチェックリスト

  • 退職予定日と、年内に再就職するかどうかをメモした
  • 源泉徴収票の発行時期と送付先を、会社にメールで確認した
  • 退職後の住所の連絡方法を会社に伝えた
  • 健康保険と年金の切り替え手続きの期限を確認した
  • 国民健康保険・国民年金の支払いの記録と控除証明書を、一か所にまとめた
  • 源泉徴収票が届いたら、写真を撮って原本を保管した
  • 再就職した場合は、前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出した
  • 再就職しない場合は、翌年の確定申告に向けて、申告に必要な書類を確認した

退職全体の流れは、次の記事に時系列でまとめています。年内に辞める準備を進めるときは、あわせて見てください。

まとめ

年内に退職して再就職しない場合、年末調整は受けられず、納め過ぎた所得税は自分の確定申告で取り戻す形になります。同じ年に再就職すれば、原則として新しい勤務先が前職の給与を含めて年末調整をします。分かれ道は「同じ年に給与を受け取る再就職があるか」です。

やることを時系列に並べると、次の流れです。

  1. 今日:退職日と、年内の再就職の有無を決めてメモする
  2. 明日:源泉徴収票の発行時期と送付先を、会社にメールで確認する
  3. 1週間後:健康保険と年金を切り替え、支払った保険料の書類をとっておく
  4. 1か月後:源泉徴収票が届いたら、再就職先へ提出するか、翌年の申告に備えて保管する

還付の申告は、退職した年の翌年1月1日から5年間できますが、国税庁のページも早めの提出を勧めています。税金の話は難しく見えて、実際は「書類を集めて、決まった画面に入力する」作業です。書類さえそろえておけば、あとで焦る場面はかなり減ります。

なお、会社が源泉徴収票や離職票を出さない、退職そのものを認めてもらえない、といった状況なら、手続き以前の問題として、弁護士への無料相談も選べます。税金の細かい判断は、お住まいの地域を管轄する税務署か、税理士に確認してください。