退職金はもらえる?いくら?辞める前に就業規則で確認する5つの項目と、人事への問い合わせメール文例

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退職金がもらえるかどうかは、法律ではなく、会社の就業規則(または退職金規程)にどう書いてあるかで決まります。厚生労働省の労働局のQ&Aでも、退職金は「必ず支給しなければならないものではない」とされています。逆に言えば、規程に支給条件が書いてあれば、条件を満たした人は受け取れる可能性が高い、ということです。

退職日を決める前にやることは、規程を開いて「勤続何年から対象か」「自己都合だと金額が変わるか」「いつ振り込まれるか」の3点を確認することです。確認せずに辞めると、あと数か月で対象年数に届いたのに、という事態になりかねません。

この記事では、規程で見るべき5つの項目、支払時期と請求できる期間、確認できないときの動き方を、人事への問い合わせメールの文例つきで整理します。

結論:退職金は「あるかどうか」から就業規則で確かめる

厚生労働省の資料や労働局のQ&Aで確認できる範囲では、退職金のルールは次のとおりです。

  • 退職金制度を作るかどうかは会社が決める。法律で全社に義務づけられているわけではない
  • 制度を設ける場合、労働基準法にもとづき、適用される労働者の範囲、退職金の決定・計算・支払の方法、支払の時期を就業規則に書く必要がある
  • 支給条件が就業規則などで明確に決まっていて、労働者が権利として請求できる場合、退職金は労働基準法上の「賃金」にあたる。支払わないと、賃金の全額払いを定めた同法24条に反することになる

つまり、「うちは退職金なんてないと思う」と思い込むのも、「どの会社にもあるはず」と思い込むのも危険です。書面で確かめるのが最初の一歩になります。

なお、ここで書くのは一般的な制度の説明です。個々の会社で規程の内容は違い、金額の計算や争いになったときの判断は、規程の文言と事情によって変わります。迷ったら、最後の章で触れる相談先を使ってください。

理由:同じ「退職」でも、規程しだいで金額が変わるから

退職金は、勤続年数、基本給、退職の理由(自己都合か会社都合か)などを組み合わせた計算式で決まっている会社が多くあります。ただし、これは会社ごとに違います。自己都合だと減額される規程もあれば、理由で差をつけない規程もあります。

たとえば、規程に「勤続3年以上の者に支給する」と書いてあるとします。入社2年10か月で辞めると、対象外になる可能性があります。あと2か月待てば対象になるなら、退職日の決め方そのものが変わります。退職日の考え方は、退職日の決め方で失敗しない|やりがちな3つのつまずきと伝え方の文例も参考になります。

もう一つ見落としやすいのが、退職金の制度が「会社が直接払うもの」か「外部の積立(企業年金や共済など)から払われるもの」かという点です。後者の場合、会社に聞いても分からず、積立先の窓口への手続きが別に必要なことがあります。どちらの仕組みかを、人事に聞く項目に入れておきます。

手順:就業規則で確認したい5つの項目

就業規則は、労働者がいつでも見られるようにしておくのが会社の義務です。社内の共有フォルダ、イントラネット、総務・人事の書棚などにあります。見つからないときは、人事か総務に「就業規則と退職金規程を見たい」と伝えます。そのうえで、次の5つを順に確認します。

1. 対象になる人(適用範囲と勤続年数)

正社員だけが対象か、契約社員やパートも含むか。勤続何年以上で支給されるか。ここで対象外なら、以降の項目は確認の必要がありません。

2. 金額の計算方法

「退職時の基本給×勤続年数に応じた支給率」のような式が書かれているのが一般的です。基本給に何が含まれるのか(手当を含むか)で金額が変わります。式が分かれば、自分の場合のおおよその額を試算できます。試算の数字は、あくまで目安です。

3. 退職理由による違い

自己都合退職と会社都合退職で、支給率や支給の有無が変わる規程があります。ハラスメントが原因で辞める場合に、自己都合として扱われるかどうかは、退職金だけでなく失業保険にも関わります。この点は、ハラスメントで辞めたら会社都合になる?離職票の「自己都合」で失敗しない3つの注意点で整理しています。

4. 支払時期と支払方法

「退職の日から1か月以内」「退職の翌月末」のように、支払時期が決まっているはずです。振込か、分割か、外部の積立から支払われるかも確認します。

5. 減額・不支給になる条件

懲戒処分を受けたとき、競業他社へ転職するとき、引き継ぎをしないときなどに、減額や不支給にする旨を書いている規程があります。条項があっても、それをそのまま使って支払いを拒めるかは、内容や事情で判断が変わります。「書いてあるから払わない」と言われたときは、一人で結論を出さず、第三者に見てもらいます。

支払時期と請求できる期間:知っておくと慌てない数字

支払時期が決まっていないとき

厚生労働省の労働局の資料では、退職手当は、あらかじめ定められた時期に支払うのが原則とされています。支払時期を定めていない場合は、請求の日から7日以内に支払う必要があると案内されています。争いのある部分は別にして、争いのない部分については、同じく請求日から7日以内に支払う、という整理です。

請求できる期間(時効)

未払いの賃金は、2020年4月の法改正で、支払期日から5年(当分の間は3年)に延びました。一方、厚生労働省のQ&Aには、退職金請求権の消滅時効は従来どおり5年で、変更はないと書かれています。残業代の3年とは別の数字なので、混同しないようにしてください。残業代の請求については、退職後でも未払い残業代は請求できる?時効3年を前提にした、今日から1か月の動き方にまとめています。

ただし、5年の数え始めがいつかは、支払時期がどう決まっているかで変わります。「まだ5年は先だから放っておいていい」と考えず、振り込まれるはずの日を過ぎたら、早めに動くのが安全です。

場面別の注意点:やりがちな3つの落とし穴

注意点1:就業規則を見ないまま、退職日を決めてしまう

先に退職日を伝えてから規程を見て、対象の年数にあと1か月足りなかった、というケースがあります。退職の意思は固くても、退職日は、規程を確認してから決めて遅くありません。退職の時期の考え方は、退職は何日前に伝えればいい?「2週間」と就業規則の「1か月前」がぶつかるときの考え方も合わせて読んでください。

注意点2:口頭の返事だけで済ませる

上司に「退職金っていくらぐらいですか」と聞いて、「満額出るよ」と言われた。後日、人事から別の金額を告げられた。こういうとき、口頭の返事は証拠になりにくいです。金額や支払時期は、人事・総務にメールなど文字で確認し、返信を保存しておきます。

注意点3:外部の積立の手続きを見落とす

会社から振り込まれるのではなく、共済や企業年金の窓口に自分で請求する仕組みの会社もあります。退職後に何も来ないと思っていたら、手続きの期限が過ぎていた、という事態を避けるため、「自分で手続きが必要なものはあるか」を、退職前に聞いておきます。

また、退職金に関わる税金の扱いや、源泉徴収票の受け取りは、会社に確認が必要です。書類が届かないときは、退職後に源泉徴収票が届かないときは?待つだけ・転職先に伝えない・口頭だけの請求、やりがちな3つの失敗と催促メール文例が役に立ちます。

よくある疑問:この場合はどうなる?

契約社員やパートでも退職金はもらえる?

規程の「適用範囲」しだいです。正社員のみと書かれていれば対象外になる可能性がありますし、雇用区分を問わず対象とする会社もあります。雇用契約書と就業規則の両方を見て、自分の区分がどう書かれているかを確かめます。見当たらない場合は、人事に「私の雇用区分は退職金の対象でしょうか」と一文で聞けば足ります。

引き継ぎが終わっていないと、退職金は出ない?

引き継ぎをしないことを不支給の条件として書いている規程はありますが、書いてあるだけで支払いを止められるかは、内容と事情によって判断が分かれます。トラブルを避けるなら、引き継ぎ資料を作って日付つきで共有し、「いつ何を渡したか」を残しておきます。これは退職金だけでなく、退職後に連絡が来たときの備えにもなります。

有給消化の期間中も、勤続年数に入る?

有給休暇を消化している間も、会社に在籍している扱いです。ただし、勤続年数の数え方や端数の扱いは規程によって異なります。月単位で切り捨てる規程もあるため、退職日をずらすと対象年数に届くかどうかは、書面で確かめてください。有給消化の進め方は、退職前の有給消化を断られたときの対処法|「忙しいから無理」と言われたらにまとめています。

転職先がもう決まっている。退職金の確認は後回しでいい?

転職先の入社日が決まっていると、退職日の自由度は下がります。だからこそ、入社日から逆算する前に、規程の対象年数と支払時期を見ておく価値があります。たとえば、月末に退職するか、その数日後に退職するかで、勤続年数の端数や賞与の支給対象が変わる場合があります。1通のメールで済む確認なので、退職日を会社に伝える前に済ませておくと、後から日程を組み直す手間が減ります。

退職金の額を、同僚に聞いて確かめてもいい?

同僚の話は参考にはなりますが、根拠にはしないほうが安全です。勤続年数も基本給も雇用区分も人によって違い、同じ年数でも額が合わないことは普通にあります。「先輩は300万円くらいだったらしい」と聞いても、自分の計算式に当てはめた数字ではありません。確かめる相手は、規程と人事の回答です。

退職金と、ほかのお金を混同しない

退職前後には、退職金のほかにも受け取るお金があります。最終月の給与、未消化の残業代、賞与、有給の買い取りに当たるものなどです。これらは別々のルールで動いていて、退職金の規程には書かれていません。

たとえば「退職金は規程で対象外だった。だから最終月の給与も出ないだろう」と考えるのは誤りです。給与は働いた分として支払われるもので、退職金の有無とは関係がありません。人事に確認するときは、退職金だけでなく、最終給与の支給日と、精算されるお金の内訳も、同じメールで1行ずつ聞いておきます。まとめて聞いておけば、やりとりの回数が減り、返信も1通に残ります。

支給の内訳の見方は、退職後に届く書類でも確かめられます。受け取った明細や通知は捨てず、日付と一緒に保管しておいてください。

確認の順番としては、次のように分けると混乱しません。

  1. 最終月の給与:支給日と、締め日までの勤務分がすべて入っているか
  2. 賞与:支給対象日(在籍していること)が規程にどう書かれているか
  3. 退職金:対象年数、計算式、支払時期、外部の積立の有無
  4. その他:未消化の有給の扱い、貸与物の返却、社会保険の手続きの案内

項目ごとに「いつまでに、どの方法で」を書き出しておくと、人事への質問が具体的になり、答えも返ってきやすくなります。

文例:人事・総務への問い合わせメール

退職の意思を伝える前に、制度を確認したいだけの段階なら、次のような短いメールで足ります。理由は書かなくて構いません。

件名:就業規則(退職金規程)の閲覧のお願い

○○部 ○○様

お疲れさまです。営業部の山田です。今後のライフプランを考える参考にしたく、就業規則と退職金規程を拝見したいと考えております。閲覧の方法(データの共有、紙での閲覧など)を教えていただけますでしょうか。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

すでに退職日が決まっていて、金額や時期を確かめたいときは、次の形が使えます。

件名:退職金の金額と支払時期についてのご確認

○○部 ○○様

お疲れさまです。営業部の山田です。○月○日付で退職予定のため、退職金について次の点を確認させてください。

  1. 私が支給の対象になるか(勤続年数・雇用区分)
  2. 支給額の見込みと計算方法
  3. 支払予定日と支払方法
  4. 私のほうで必要な手続きや提出書類の有無

お忙しいところ恐縮ですが、○月○日までにメールでご回答いただけますと幸いです。

返事の期限を一つ入れておくと、先延ばしにされにくくなります。期限までに返事がなければ、同じメールに追記する形で、もう一度送ります。

支払われない・金額に納得できないときの動き方

支払時期を過ぎても振り込まれない、規程にあるはずの金額と違う、といったときは、次の順に動きます。

  1. 就業規則・退職金規程の該当ページと、人事とのメールを保存する(写真やPDFでもよい)
  2. 支払予定日を過ぎたら、日付つきのメールで確認する。「○月○日までにご回答ください」と期限を入れる
  3. それでも動かないときは、会社を管轄する労働基準監督署の総合労働相談コーナーなど、公的な窓口に相談する
  4. 金額が大きい、会社が支払いを拒んでいる、といった場面では、弁護士への相談も選択肢に入る

退職金は、賃金にあたる場合でも、規程の書き方や支給条件の読み方で意見が分かれることがあります。結果は規程の内容や証拠の状況で変わるため、「必ず取り戻せる」とは言えません。それでも、書類をそろえた状態で相談すると、話が早く進みます。

職場のハラスメントが原因で辞めようとしていて、退職の伝え方や会社とのやりとりそのものが不安なときは、一人で抱えきれなくなる前に、弁護士への無料相談という選択肢もあります。退職全体の流れは、退職するときにやること一覧|伝える時期から退職後の保険・年金まで順番に整理で順番に確認できます。

やることチェックリスト

  • 就業規則と退職金規程を探す(社内共有、総務への依頼)
  • 退職金制度があるか、自分が対象かを確認する(雇用区分、勤続年数)
  • 計算式を確認し、おおよその金額を試算する
  • 自己都合と会社都合で金額が変わるかを確認する
  • 支払時期、支払方法、外部の積立の有無を確認する
  • 減額・不支給の条件に自分が当たらないか確認する
  • 金額・時期は、メールなど文字で確認し、返信を保存する
  • 退職日は、対象年数や支給日を踏まえて決める
  • 支払予定日を過ぎたら、期限つきのメールで確認する
  • 解決しないときは、労働基準監督署や弁護士に相談する

まとめ

退職金は、法律で全員に保証されたものではなく、会社の就業規則(退職金規程)の定めで決まります。規程に支給条件が明確に書かれていれば、退職金は賃金にあたり、払われない場合は法律上の問題になり得ます。請求できる期間は、厚生労働省のQ&Aによると従来どおり5年です。

辞める前にやることは、次の3つに絞れます。

  1. 規程を開いて、対象年数、計算式、自己都合の扱い、支払時期を確かめる
  2. 金額と時期は、メールで文字に残す
  3. 支払われないときは、日付つきで催促し、公的な窓口や弁護士にも相談する

今日できる最初の一歩は、人事か総務に、上の「閲覧のお願い」のメールを送ることです。退職を決めた事実を伝える必要はありません。

参考にした公的情報:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(賃金請求権の消滅時効)、茨城労働局「退職金はいくら支払う?」、群馬労働局「賃金支払いに関する事項のあらまし」。制度は変わることがあるため、最新の内容は厚生労働省・労働局の公式ページで確認してください。