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結論から書きます。失業保険(雇用保険の基本手当)をもらっている間にアルバイトをすること自体は、禁止されていません。ただし、働いた日は、収入の有無にかかわらず、必ず「失業認定申告書」に書いて申告する必要があります。申告せずに働くと、不正受給として扱われることがあります。
線引きの目安は、1日の労働時間です。ハローワーク府中の説明資料では、4時間以上の労働は「就職・就労」、4時間未満の労働は「内職・手伝い」として、申告書のカレンダーに別の印をつけるよう案内されています。4時間以上働いた日は、その日の基本手当が支給されない扱いになります。
退職したばかりで、貯金の減りが気になる。次の職場が決まるまでの数週間、短い時間でも働いておきたい。そう考えるのは自然なことです。この記事では、どこまでなら申告で済み、どこからが問題になるのかを、公的な資料で確認できた範囲で整理します。
失業保険をもらいながら働くときの基本ルール
基本手当は、「失業の状態」にある人に支給されるお金です。ハローワーク府中の説明資料では、失業の状態を次のように説明しています。
- 積極的に就職しようとする意志がある
- いつでも就職できる能力がある
- 積極的に就職活動を行っている
- 就職活動を行っているのに、職業に就くことができない
この状態にあるかどうかは、原則として28日に1回指定される認定日に、本人がハローワークに行って確認します。認定日に提出するのが、失業認定申告書です。つまり、アルバイトをしたかどうかは、認定日ごとに自分の申告で伝える仕組みになっています。ハローワークが勤務先を毎回調べてくれるわけではないため、申告の内容がそのまま支給の根拠になります。
資料には「失業認定申告書は法定様式となり、申告の内容により基本手当の支給となりますので、正しい申告をお願いします」とも書かれています。
「4時間」で何が変わるのか
申告書の1欄は、「認定対象期間に働いたかどうか」を書く欄です。認定対象期間とは、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間を指します。働いていなければ「イ」のしないに丸をつけ、働いた日があれば「ア」のしたに丸をつけて、カレンダーに印を書き込みます。
4時間以上働いた日(就職・就労)
カレンダーに「○」をつけます。資料には「基本手当は支給されません」とあります。1日だけの短期アルバイトでも、8時間働いた日、5時間働いた日は、この扱いです。支給されなかった分がどう後ろへ回るか(受給できる期間が延びるかどうか)は、所定給付日数や受給期間の満了日との関係で変わるため、自分の受給資格者証を持って窓口で確認するのが確実です。
4時間未満の労働(内職・手伝い)
カレンダーに「×」をつけます。収入があった場合は、2欄にも記入します。収入の額と、何日分の収入かをまとめておくと書きやすくなります。短時間の働き方でも、収入があれば基本手当が減額されたり、支給が後ろへ回ったりする場合があります。計算の仕方は、日額や収入の額によって変わるので、ここでは数字を断定しません。
収入がゼロでも申告は必要
友人の店を無償で手伝った、親族の仕事を手伝ったという場合も、「手伝い」として申告の対象になります。「お金をもらっていないから書かなくていい」とは限りません。判断に迷うときは、申告書に書く前に窓口で聞いてください。
申告しないとどうなるか
ハローワーク府中の資料では、基本手当の受給中に仕事をしたことを申告しなかったり、就職したことを隠して受給を続けたり、偽りの申告で受給しようとしたりした場合、不正受給として処分されると説明されています。内容は次のとおりです。
- 支給停止:不正を行った日以降、一切の支給がなくなる
- 返還命令:不正に受け取った金額を、全額返す
- 納付命令:不正に受け取った金額とは別に、その2倍の額の納付を命じられることがある
- 財産の差押え:返還や納付をしないときは、差押えが行われる
- 刑罰:悪質な場合は、詐欺罪として告発されることもある
ハローワークインターネットサービスの「基本手当」のページにも、偽りその他不正の行為で基本手当を受けたり受けようとしたりした場合は、以後の手当を受けられなくなり、返還を命じられること、さらに原則として不正受給額とは別に、不正の行為で受けた額の2倍以下の金額の納付を命じられることがあると書かれています。2倍の部分の扱いは資料によって表現が違うため、実際の金額の決まり方は、ハローワークで確認してください。
数日分のアルバイト代のつもりでも、あとから発覚したときの負担は、そのアルバイト代をはるかに超えることがあります。申告して基本手当が少し減るほうが、結果として手元に残るお金は多くなります。
働く前に、受給資格者証で見ておく2つの数字
アルバイトを入れるかどうかは、受け取れる額と期間を知ってから決めると、判断がぶれません。受給資格者証には、次の2つの欄があります。
- 基本手当日額:1日あたりの支給金額。失業給付は失業を1日単位で数えるため、途中でアルバイトなどがなければ、受給額は基本手当日額×28日が目安になる
- 所定給付日数:基本手当が支給される最大の日数。受給中に受給期間の満了日が来ると、そこで支給は終わる
たとえば、基本手当日額が5,000円なら、働かない場合の1回の認定で受け取る額の目安は14万円です(この数字は計算の例で、実際の日額は人によって違います)。ここから、アルバイトで働く日が増えるほど、その日数分は「失業の状態ではなかった日」になります。時給1,200円で5時間働けば6,000円の収入ですが、その日の基本手当は出ません。アルバイト代と基本手当を比べて、どちらが手元に残るかを、日額を見ながら計算してみてください。
所定給付日数が短い人は、受給できる期間そのものが限られています。給付が終わったあとの生活費を考えて、働く時期を決める人もいます。迷ったときは、窓口で「日額がこの金額で、週に何時間までなら、どういう扱いになるか」と具体的に聞くのが近道です。
やりがちな場面ごとの判断
単発のイベントスタッフを1日だけ引き受けた
8時間働いたなら「就職・就労」の扱いで、その日に○をつけます。次の認定日の申告書に、日付を間違えずに書きます。
知人の引っ越しを2時間だけ手伝って、お礼を受け取った
4時間未満なので「内職・手伝い」で、×をつけます。お礼がお金や商品券であれば、収入として2欄に書く対象になる可能性があります。
フリマアプリで不用品を売った
自分の持ち物を処分するだけなら、仕事をしたことにはならない場合が多いと考えられます。ただし、仕入れて売る、継続して販売するといった形になると、事業や内職として見られる可能性があります。ここは申告書の書き方に迷いやすいので、窓口に「こういう売り方をしている」と具体的に伝えて、判断を聞いてください。
自分で事業を始める準備をしている
申告書の4欄には、「すぐに応じられるか」を答える欄があり、応じられない理由の選択肢に「自営業を開始したため又は自営業の開始予定があるため」があります。開業の準備に時間を使っている場合は、ここで正直に答える必要があります。
派遣やアルバイトの面接のために出かけた
面接や求職活動は、働いた日ではありません。求職活動実績としては、求人への応募や、ハローワークが行う職業相談などが対象です。単に求人情報を眺めただけ、知人に仕事の紹介を頼んだだけ、登録しただけでは、実績に数えられないと資料に書かれています。
申告書を書くときの手順
認定日の前に、次の順で準備しておくと、窓口で慌てずに済みます。
- 認定対象期間(前回の認定日から今回の認定日の前日まで)の勤務日と勤務時間を、手帳やスマホのメモに日ごとに書き出す
- 4時間以上の日と、4時間未満の日を分ける。休憩時間を除いた実働でよいか迷う場合は、窓口で確認する
- 4時間未満の日に収入があれば、日付・金額・何日分かをまとめる
- 申告書の1欄で「ア」に丸をつけ、カレンダーの該当日に、4時間以上は○、4時間未満は×を書く
- 収入があれば、2欄に記入する
- 書き方に迷った箇所には印をつけておき、窓口で「ここがこれで合っているか」と聞く
記入は黒のペンかボールペンで行い、訂正は二重線で消します(修正液は使えません)。給料明細や勤務のシフト表は、後から確認を求められることがあるので、捨てずに取っておくと安心です。
認定対象期間に1日でも働いた日がある場合、オンラインではなく来所での認定になることがあります。その月の認定日をスマホのカレンダーに入れておいて、時間に余裕をもって行ってください。
注意点:先に確認しておきたい3つのこと
1. 退職の理由によって、受給の始まる時期が変わる
自己都合で退職した場合、待期のあとに給付制限の期間があります。いつから基本手当が出るのか、その間に働いたらどうなるのかは、離職票の内容や受給資格の決定の状況で変わります。給付制限の数え方は、自己都合で退職すると失業保険はいつから?給付制限1か月の数え方で整理しています。給付制限の期間中のアルバイトの扱いは、この記事では公的な資料で確認できていないため、書きません。受給資格の決定の際に、窓口で聞いておいてください。
2. 長く働く予定なら、就職として扱われることがある
週に何日も、長い時間働く契約を結ぶと、アルバイトではなく「就職した」という扱いになる場合があります。申告書の4欄にも、「就職したため又は就職予定のため」という項目があります。働き始める前に、契約の内容(週の所定労働時間、契約期間)をハローワークに伝えて、扱いを聞いてください。再就職手当の対象になるかどうかも、早めに確認したほうが損をしません。
3. 「バレないだろう」という判断が、一番高くつく
現金払いのアルバイトだから分からない、と考える人もいます。けれども、申告と実際の働き方が食い違っていないかは、ハローワークが確認する場面があります。不正受給のペナルティは、前の章で挙げたとおり重いものです。数千円、数万円のために、受給中の全額返還のリスクを負う理由はありません。
シフトを受ける前に、スマホでできる3分の確認
アルバイトの話が来たとき、その場で返事をせずに、次の3つを手元で確認してからにすると、申告のミスを防げます。
- 次の認定日はいつか。受給資格者証か、認定日の案内を見て、カレンダーアプリに入れる
- そのシフトは1日何時間か。休憩を除いた実働が4時間以上なのか、未満なのかを、募集要項か店長への確認で出しておく
- 給料はいつ、いくら入る予定か。日払い・週払い・月末締めの翌月払いのどれかを聞いておく
たとえば、月曜から金曜のうち水曜と金曜の2日だけ、3時間ずつ入る話なら、どちらの日も4時間未満の「内職・手伝い」になる見込みです。ただし、勤務時間が延びて4時間を超えた日は扱いが変わります。残業や延長で想定より長くなった日は、タイムカードやシフト表の実際の時刻で判断します。口頭で聞いた「だいたい3時間」ではなく、記録に残った時間を基準にしてください。
職場に頼んでおくと役立つのは、シフト表のコピーや、勤務時間が分かる明細です。「失業保険の申告で、勤務した日と時間を書く必要があるので、あとで勤務表を見せてもらえますか」と、働き始める日に一言伝えておけば、あとから頼むより断られにくくなります。
退職の経緯がつらかった人へ
ハラスメントや無理な要求で辞めた直後は、心身が回復しきっていないことがあります。「すぐ働かないとお金が足りない」と焦って、体調が戻る前にアルバイトを入れてしまい、再び消耗する人もいます。
病気やけがで、すぐに就職できない状態が続くときは、基本手当の受給期間を延長できる場合があります。ハローワーク府中の資料にも、病気やけがのため、妊娠・出産・育児のためにすぐ就職できない場合は、受給期間の延長ができる場合があると書かれています。働けない期間があるなら、受給期間が切れる前に、窓口に相談してください。
辞めた理由が上司からのハラスメントだった場合は、離職票の離職理由の欄が、受給の条件や給付日数に関わります。会社が書いた離職理由に納得できないときは、ハローワークの窓口にその旨を伝えて、手続きを聞いてください。この点は、ハラスメントで辞めたら会社都合になる?離職票の「自己都合」で失敗しない3つの注意点で詳しく書いています。会社との間で、未払いの賃金や離職理由をめぐる争いが続いているときは、一人で抱えず、弁護士への無料相談も選択肢です。
申告の文例:窓口で聞くときの言い方
申告の判断に迷うときは、窓口で次のように伝えると、話が早く進みます。
「受給資格者証の番号は〇〇です。次の認定日までの間に、11月12日と14日に、飲食店で1日5時間ずつアルバイトをしました。この2日は、申告書に○をつければよいでしょうか。時給は〇〇円で、給料日はまだ先です」
収入が確定していない場合でも、働いた日は先に申告します。給料日が認定日より後になるときの収入の書き方は、窓口で確認してください。
電話で聞くなら、次のように始めます。
「雇用保険の基本手当を受給中の者です。週に2日、1日3時間のアルバイトの話があります。働き始める前に、申告のしかたと、基本手当への影響を教えてください」
聞いた内容は、日付と担当部署をメモしておくと、あとで自分の判断の根拠を示せます。
やることチェックリスト
- 受給資格者証を出して、次の認定日と、認定対象期間を確認した
- 働いた日の日付・開始と終了の時刻・休憩時間・収入を、日ごとにメモしている
- 4時間以上の日(○)と4時間未満の日(×)を分けた
- 収入があった日は、日付・金額・何日分かを2欄に書けるように整理した
- 給料明細、シフト表、振込記録を保管している
- 働く予定が長くなりそうなときは、契約の内容をハローワークに伝えて相談した
- 書き方に迷った箇所は、自己判断せずに窓口で確認した
- 体調が戻らず働けない期間があるときは、受給期間の延長の手続きを窓口に聞いた
まとめ
失業保険の受給中にアルバイトをすること自体は禁止されていませんが、働いた日は収入の有無にかかわらず、認定日の失業認定申告書で申告する必要があります。1日4時間以上は「就職・就労」で、その日の基本手当は支給されません。4時間未満は「内職・手伝い」で、収入があれば2欄に書きます。申告しないと、支給停止・全額返還・上乗せの納付といった重い処分につながります。
迷ったときは、受給資格者証と、勤務日・時間・収入のメモを持って、ハローワークの窓口で聞くのが一番確実です。退職までの流れを順番に確認したい場合は、退職するときにやること一覧も参考にしてください。
確認した公的な資料は次のとおりです。ハローワークの運用は、地域や時期で細かく違うことがあるため、実際の手続きは受給資格者のしおりと窓口の案内に従ってください。






