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退職日が月末(30日や31日)か、その前日以前かで、厚生年金の保険料は1か月分変わります。日本年金機構のFAQでは、資格喪失日は退職日の翌日で、保険料は資格喪失日が属する月の前月分まで納める、と説明されています。月末に辞めると資格喪失日が翌月1日になるので、退職した月の分まで保険料がかかる、という仕組みです。
だから「月末に辞めるのは損」と単純に言えるわけではありません。月末までいれば、その月も厚生年金に加入していた扱いになり、将来の年金額の計算に入る月が1か月増えます。一方で、月の途中で辞めて自分で国民年金に切り替えれば、切り替えた月から国民年金の保険料を払う形になります。どちらが得かは、次の仕事が決まっているか、いつから働くか、有給が何日残っているかで変わります。
以下では、よくある5つの場面を取り上げ、退職日をどう考えればいいかを答えます。最後に、人事や総務に送れる確認メールの文例と、決める前のチェックリストも載せました。退職日を決めたあとの手続き全体は、退職するときにやること一覧|伝える時期から退職後の保険・年金まで順番に整理で順番に確認できます。
最初に押さえる2つのルール:「退職日の翌日」と「前月分まで」
場面別の話に入る前に、前提になる2つのルールだけ整理します。ここが分かれば、あとの場面はほぼ同じ考え方で読めます。
ルール1:資格喪失日は退職日の翌日
会社の厚生年金に加入している資格がなくなる日を「資格喪失日」といいます。日本年金機構のFAQでは、退職した日の翌日が資格喪失日と説明されています。10月15日に退職したなら10月16日、10月31日に退職したなら11月1日です。
ルール2:保険料は資格喪失日の月の前月分まで
厚生年金保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで納めます。日本年金機構のFAQにある例では、10月15日に退職すると資格喪失日は10月16日で、10月分の保険料はかからず、9月分までが対象です。
月末に退職した場合は、同じFAQで例外として説明されています。10月31日に退職すると資格喪失日は11月1日になり、10月分まで納める必要があります。給与の締切日によっては、退職時の給与から前月分と当月分の本人負担分がまとめて控除されることがある、とも書かれています。
この「2か月分が一度に引かれる」という点で、最後の給与明細を見て驚く人が少なくありません。手取りが想定より少ないのは、計算ミスではなく仕組みの結果である場合があります。
ここで書いたのは厚生年金保険料についてです。健康保険料の扱いは加入先(協会けんぽや会社の健康保険組合)によって細部の取り扱いが異なることがあるため、最後の給与の控除の内訳は、給与明細と人事・総務への確認で裏づけてください。
場面1:月末まで働くか、その前に辞めるか迷っている
月曜の夜、カレンダーを見ながら「30日で辞めるのと、25日で辞めるのと、どちらがいいのか」と考えている。いちばん多い迷いです。
答えは、次の仕事の予定で決まります。
- 次の仕事がすぐ決まっていて、翌月1日から入社する:月末退職が自然です。会社の厚生年金が切れ目なくつながり、自分で国民年金の手続きをする必要がありません
- 次の仕事が決まっていない:月末退職だと、退職月までの保険料は最後の給与から引かれます。月の途中で辞めると、その月の厚生年金保険料はかかりませんが、退職の翌日から国民年金への切り替えが必要になります
- 心身がすでに限界で、少しでも早く離れたい:保険料の差より、体を守ることを優先して構いません。数千円から数万円の差より、休める日が1日でも早く来ることのほうが意味を持つ場合があります
退職後の国民年金は、手続きの期限や、払えないときの免除の仕組みがあります。退職後の国民年金はいつまでに何をする?14日以内の手続きと、払えないときの免除を場面別Q&Aで整理に詳しくまとめています。
退職日そのものの決め方(引き継ぎ・有給・就業規則との兼ね合い)は、退職日の決め方で失敗しない|やりがちな3つのつまずきと伝え方の文例も参考になります。
場面2:最後の給与が思ったより少ない。何が引かれている?
退職後に最後の給与明細を開くと、振込額が普段より明らかに少ない。次のような項目が重なっている可能性があります。
- 月末退職で、前月分と当月分の厚生年金保険料(や健康保険料)がまとめて控除されている
- 有給を使い切ったことで、欠勤扱いの日数が出ている
- 社宅費や貸与品の精算など、会社独自の項目が引かれている
- 住民税が一括で徴収されている(退職時期によってはこうなります)
日本年金機構のFAQにも、給与の締切日によっては退職時の給与から前月分と当月分の本人負担分が控除されることがある、とあります。まず明細の「厚生年金保険料」「健康保険料」の欄を、直近の月の金額と比べてみてください。ちょうど2倍近くなっていれば、2か月分が引かれている可能性が高いです。
住民税の一括徴収や、退職後に届く納付書については、退職後の住民税、払い忘れ・引かれ過ぎで慌てないために|やりがちな3つの失敗と、会社への確認メール文例で扱っています。
内訳に納得できない項目があれば、給与担当に「この控除の根拠を教えてください」と聞いて構いません。聞き方は、後ろの文例を使えます。
場面3:月の途中で辞めたら、その月の保険料は本当にゼロ?
日本年金機構のFAQの例のとおり、10月15日に退職すれば資格喪失日は10月16日で、10月分の厚生年金保険料はかかりません。ここまでは確認できています。
ただ、「だから得」と結論づけるのは早い場合があります。理由は2つあります。
- 退職の翌日から、自分で国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があり、その保険料を払うことになる。次の勤務先が決まっていれば、その会社の加入で足りる場合もある
- 厚生年金に加入していた月数は、将来の年金額の計算に関係する。月末まで在籍して1か月増やすか、月の途中で辞めて保険料負担を抑えるかは、年金額と今月の支払いのどちらを重く見るかの判断になる
保険料の金額は、標準報酬月額(給与の目安になる等級の金額)や加入先で変わります。具体的な金額は、給与明細の控除額が一番確実な手がかりです。ネットの試算記事の数字は、年度や支部の料率が違うことがあるので、自分の明細で確認してください。
場面4:有給が残っていて、消化したら退職日が月をまたぎそう
有給が15日残っていて、最終出社日は10月20日。そこから有給を消化すると、退職日は11月上旬になる。こういうケースは珍しくありません。
ここで押さえたいのは、「退職日」は有給消化が終わった日で、最終出社日とは別だということです。保険料の計算は退職日を基準にします。つまり、有給消化の結果、退職日が10月31日(月末)か、11月5日(月の途中)かで、さきほどの2つのルールが当てはまります。
- 退職日が10月31日:資格喪失日は11月1日。10月分まで保険料がかかる
- 退職日が11月5日:資格喪失日は11月6日。11月分の保険料はかからず、10月分までが対象(日本年金機構のFAQの「10月15日退職」の例と同じ考え方)
有給消化は、退職日が月末をまたぐかどうかを左右します。消化できる日数と、希望する退職日を、人事に早めに伝えておくと、最後の給与の手取りも読みやすくなります。有給を断られたときの対応は、退職前の有給消化を断られたときの対処法|「忙しいから無理」と言われたらにあります。
場面5:退職日を伝える前に、人事へ何を確認すればいい?
退職日を決める段階で、人事・総務に確認しておくと後悔しにくい項目があります。上司に退職の意思を伝えたあと、または伝える前に、次の点を聞いてください。
- 最後の給与の締切日と支給日はいつか
- 退職日が月末の場合、最後の給与から社会保険料(厚生年金・健康保険)が何か月分控除されるか
- 有給を消化した場合、退職日はどの日になる扱いか
- 離職票や源泉徴収票など、退職後に必要な書類はいつ頃届くか
聞くこと自体は、退職を妨げる行為でも失礼な行為でもありません。給与の控除は、会社にとっても説明責任のある事項です。
メールで聞くなら、次のような形が使えます。
件名:退職日に伴う最終給与・社会保険料の確認のお願い
○○課 ご担当者様
お疲れさまです。○○部の(氏名)です。
退職日を(○月○日)で予定しております。退職の手続きにあたり、次の点を教えていただけますでしょうか。
1. 最後の給与の締切日と支給日
2. 退職日が月末の場合の、社会保険料(厚生年金・健康保険)の控除月数と金額の目安
3. 有給休暇を消化した場合の、最終的な退職日の扱い
4. 離職票・源泉徴収票など、退職後に必要な書類の送付時期
お忙しいところ恐れ入りますが、(○月○日)までにご回答をいただけますと助かります。どうぞよろしくお願いいたします。
返事が来ないときは、2〜3営業日あけて、同じ件名のまま「先日の件、いかがでしょうか」と一言送れば十分です。それでも返答がない場合は、記録を残したうえで、次の相談先を考える段階です。
場面6:転職先の入社日が決まっている。退職日はいつにすればいい?
転職先から「11月1日から来てください」と言われている。この場合は、現職の退職日を10月31日(月末)にそろえるのが、いちばん手続きが少なく済みます。理由は、退職日の翌日が資格喪失日になるという原則から、次のようにつながるからです。
- 10月31日に退職すると、資格喪失日は11月1日になる
- 11月1日に新しい会社へ入社すれば、新しい会社での加入が翌日から始まる
- 空白の期間ができないので、自分で国民年金や国民健康保険の手続きをする場面が減る
反対に、10月25日に退職して11月1日に入社すると、間の数日は会社の保険に入っていない期間になります。この期間の扱いは、国民年金・健康保険それぞれで手続きが必要になる場合があります。入社日と退職日の間にすき間があるときは、退職後の健康保険の選び方もあわせて確認してください。
転職先の入社日が決まっているのに、現職が「月末までは辞めさせない」「引き継ぎが終わるまでは待ってほしい」と言う場合もあります。そのときは、入社日を動かせるか転職先にも早めに相談し、現職には退職日の希望を文字で伝えておくと、あとで話がずれにくくなります。引き継ぎが理由で退職が遅れそうなときは、退職前の引き継ぎが終わらないときは|「引き継ぎが済むまで辞めさせない」と言われたらどうする?進め方と文例も役に立ちます。
最後の給与が出るまでの流れを時間順に見る
保険料の控除は、給与の締切日と支給日が絡むため、頭の中だけで追うとこんがらがります。退職日を決めたら、次の順に書き出すと、どの給与でいくら引かれるのかが見えやすくなります。
- 退職日を決める(例:10月31日)
- 資格喪失日を確認する(退職日の翌日なので、11月1日)
- 保険料の対象月を確認する(資格喪失日の月の前月まで。この例では10月分まで)
- 給与の締切日と支給日を人事に聞く(例:10月分は10月末締めの11月25日払い、など)
- どの給与から、何か月分が控除されるかを聞く
- 支給された給与明細で、控除額を確認する
会社によって、社会保険料を「当月分を当月の給与から引く」ところもあれば、「前月分を当月の給与から引く」ところもあります。日本年金機構のFAQが、給与の締切日によっては前月分と当月分がまとめて控除されることがあると書いているのは、このためです。自社がどちらの方式かは、普段の給与明細と就業規則(給与規程)で確認できます。
確認の手順は単純です。直近の給与明細の「支給日」と、控除されている社会保険料がどの月分にあたるのかを、人事に1度だけ聞きます。その答えと、退職日の翌日が属する月を見比べれば、最後の給与で何が起きるかを自分で見通せます。
やってはいけないこと:保険料の差だけで退職日を決める
保険料の差は、数千円から数万円の範囲に収まることが多いと考えられます。この金額のために、体や心の状態が悪いのに無理をして月末まで出勤するのは、割に合わない場合があります。
注意点を3つ挙げます。
- 就業規則が定める退職の申入れ期間を無視して、保険料の都合だけで退職日を決めない。申入れ期間と退職日がぶつかると、トラブルになりやすいです。2週間と1か月前のどちらで動くかは、退職は何日前に伝えればいい?「2週間」と就業規則の「1か月前」がぶつかるときの考え方で整理しています
- 「月末でないと損をする」と言われても、その場で判断しない。数字は人事に出してもらい、自分の明細で比べてから決める
- 退職日を後から動かしたくなったとき、会社の合意なしに動かせるとは限らない。退職日が決まったら、メールなど文字で残す
上司や人事に退職日を伝えたとたん、態度が変わることもあります。「月末まで残れ」と執拗に言われるなど、退職日をめぐって圧力を感じるときは、1人で抱えず、弁護士への無料相談も選択肢に入ります。
会社が「社会保険料は規定どおり引いている」と答えたのに、金額に腑に落ちない点が残るときは、給与明細と就業規則の写しを手元に置いたうえで、もう一度具体的な項目名を挙げて質問してください。「何月分の厚生年金保険料が、いくら引かれているのか」まで聞けば、説明の食い違いが見つかりやすくなります。口頭で聞いた場合は、聞いた日付と相手の名前、答えの内容をメモに残しておくと、あとで話が食い違ったときに役立ちます。
退職日を決める前のチェックリスト
- 次の仕事の入社日と、会社の社会保険の加入日を確認した
- 残っている有給の日数と、消化したあとの退職日を数えた
- 就業規則で、退職の申入れ期間を確認した
- 最後の給与の締切日・支給日を人事に聞いた
- 月末退職の場合、社会保険料の控除が何か月分になるか聞いた
- 退職日と最終出社日を、メールなど文字で確認した
- 退職後の健康保険と年金を、どうするか決めた(退職後の健康保険はどれを選ぶ?任意継続・国民健康保険・家族の扶養を、場面別Q&Aで整理)
まとめ:月末退職は「損」ではなく、退職月の保険料がかかる仕組み
日本年金機構のFAQの整理を使うと、退職日と保険料の関係は次のとおりです。
- 資格喪失日は、退職日の翌日
- 保険料は、資格喪失日が属する月の前月分まで
- 月末(10月31日)に退職すれば資格喪失日は11月1日で、10月分まで保険料がかかる
- 月の途中(10月15日)に退職すれば、10月分はかからず、9月分まで
- 給与の締切日によっては、最後の給与から前月分と当月分がまとめて控除されることがある
退職日は、次の仕事・有給・就業規則・自分の体調の4つを並べて決めます。保険料の差は、その判断材料の1つです。決めたあとは、人事への確認メールで控除の内訳を聞き、最後の給与明細で照らし合わせてください。
退職の伝え方や退職日をめぐって会社と揉めそうなとき、一人で抱えきれないときは、弁護士への無料相談も選択肢です。






