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退職から1か月がたっても源泉徴収票が届かないときは、会社の経理や人事に、メールなど記録が残る形で交付を求めてください。給与を支払った会社は、年の途中で退職した人にも源泉徴収票を渡さなければならず、国税庁の資料では「退職後1か月以内」に税務署へ提出し、もう1部を本人に交付する扱いとされています。
届かないまま放っておくと、転職先の年末調整で前の会社の給与を合算できなかったり、年内に再就職しない場合に確定申告の準備が止まったりします。逆に言えば、期限を数えて、文面で請求して、使い道に合わせて動くだけで、ほとんどの場合は片づきます。
この記事では、源泉徴収票の請求でやりがちな失敗を3つ挙げ、それぞれの回避策と、そのまま使える催促メールの文例を並べます。退職のときに上司と揉めて連絡を取りづらい人も、同じ手順で進められるようにしてあります。
先に押さえる:源泉徴収票は何のための書類か
源泉徴収票は、その年に会社から支払われた給与の合計額と、すでに天引きされた所得税の額を書いた書類です。ふだんは年末調整のあとに年内に会社から渡されるので、手元に実物を持ったことがない人もいます。
退職したときは事情が変わります。年の途中で辞めた人の場合、国税庁の「源泉徴収のあらまし」にあたる資料には、給与所得の源泉徴収票は、年の中途で退職した受給者については退職後1か月以内に税務署長に提出し、他の1部を受給者に交付しなければならない、と書かれています(所得税法226条1項)。つまり、退職日から1か月以内が、会社が動くべき目安です。なお、年の途中で退職した人の分は、ほかの人の分とあわせて翌年1月31日までに税務署へ出してもよいという扱いも同じ資料にあります。そのため、会社の経理が「本人への交付は年末にまとめて」と考えていることがありますが、本人への交付が1か月以内という点は変わりません。
この資料は2018年版です。細かい扱いは改正されることがあるので、最新の内容は国税庁のサイトか税務署で確認してください(国税庁「源泉所得税のあらまし」源泉徴収票の項目)。
また、同じ資料には、会社が本人の承諾を得て、紙の代わりに電子データで提供する方法も認められていること、ただし本人が請求したときは紙で交付する必要があることが書かれています。「メールやマイページで送った」と言われる場合があるのは、このためです。
失敗1:「そのうち届くはず」と待つだけで、日付を数えない
いちばん多いのは、退職日を過ぎても「離職票と一緒に来るのだろう」と待ち続けるパターンです。ところが源泉徴収票は、ハローワークに出す離職票とは別の書類で、作る部署も違います。離職票は人事・総務、源泉徴収票は給与計算の経理というように、担当が分かれている会社は少なくありません。
たとえば10月31日に退職した人は、12月になっても封筒が来なければ「何かおかしい」と考えてよい時期です。ところが多くの人は、年末が近づいて転職先の総務から「前の会社の源泉徴収票を出してください」と言われて、初めて慌てます。
回避策:退職日にカレンダーへ「退職日+1か月」を入れる
退職したその日のうちに、スマホのカレンダーへ「源泉徴収票が届いているか確認」という予定を、退職日の1か月後に入れておきます。その日に届いていなければ、次のどれかを確認します。
- 自宅に郵便が来ていないか(転居や旧住所への発送の可能性)
- 会社のメールや社内システム、給与明細のマイページに、電子データで入っていないか(会社が電子交付の承諾を取っている場合)
- 退職時にもらった書類の中に、すでに入っていないか
この3つを見ても見つからなければ、請求に進みます。「見落としていた」と気づいたときに恥ずかしくないよう、まず自分側を一周しておくのがコツです。
離職票が届かないときの動き方は、別記事で詳しくまとめています。同じ「会社から書類が来ない」場面でも、窓口や期限が違うので、両方を並べて確認してみてください(離職票が届かないときの動き方|退職後に会社から何も来ない場合、今日から1か月の手順と文例)。
失敗2:転職先に「あとで出します」と曖昧に伝えて、年末調整に間に合わない
年内に転職する人にとって、前の会社の源泉徴収票は、新しい会社の年末調整で使う書類です。その年に前の会社でもらった給与を、新しい会社の給与と合算して税額を計算するためです。年の途中で退職して再就職した人は、一般的に前職の源泉徴収票を新しい会社へ出すよう求められます。
ここで起きがちなのが、次のような場面です。
- 入社時に「源泉徴収票は届いたら出します」と口頭で言っただけで、期日を決めなかった
- 11月に年末調整の書類が配られたのに、前職の分が空欄のまま出してしまった
- 12月の年末調整の締め切りまでに用意できず、「自分で確定申告するしかないか」とあきらめた
年末調整で前職分が反映されないと、年が明けてから自分で確定申告をして、払いすぎた分や足りない分を精算する流れになることがあります。申告そのものはできますが、手間が増えます。
回避策:転職先には「いつまでに出せるか」を具体的な日付で伝える
新しい会社の総務や人事には、早めに状況を伝えておきます。「前の会社に請求しています。届き次第すぐ提出します。年末調整の締め切りはいつですか」と聞くだけで、向こうは動きやすくなります。口頭だけにせず、メールで一言残しておくと、あとで「言った・言わない」になりません。
年内に間に合わなかった場合の確定申告のやり方は、あとの節で書きます。
退職後の住民税や年金など、お金まわりの手続きは源泉徴収票の金額とも関わります。全体の順番を見渡したいときは、まとめ記事が使えます(退職するときにやること一覧|伝える時期から退職後の保険・年金まで順番に整理)。
失敗3:電話や口頭で頼んだだけで、記録が残らない
3つめは、請求のしかたの失敗です。経理に電話して「源泉徴収票をお願いします」と言い、「わかりました」と返事をもらったので安心した。ところが2週間たっても届かない。もう一度電話すると、担当者が変わっていて「聞いていません」と言われる。このやり取りは珍しくありません。
退職のときに上司や人事と関係がこじれていると、さらに難しくなります。連絡を取るだけで気が重く、後回しにしているうちに、年末が近づいてしまいます。
回避策:メールや書面で、日付と送り先を指定して請求する
請求は、メールか書面にします。入れておきたい項目は次のとおりです。
- 退職日と、在籍時の所属・氏名(同姓同名や部署違いの取り違えを防ぐため)
- 必要な書類の名前(「給与所得の源泉徴収票」)と、対象の年
- 送り先の住所(退職後に引っ越した場合は特に)
- いつまでに必要か(転職先の締め切り、確定申告の予定など)
感情的な言葉は入れず、事実と依頼だけを書きます。次に、そのまま使える文例を示します。
催促メールの文例(1回目・2回目)
1回目:退職後1か月前後に送る
宛先は、人事・総務・経理のうち、在籍中に給与のことで連絡していた部署にします。担当がわからなければ、人事に送って「経理への転送をお願いします」と添えます。
件名:源泉徴収票の送付のお願い(○○部・氏名)
○○株式会社 人事・総務ご担当者様
お世話になっております。○月○日付で退職した、元○○部の○○○○です。
令和○年分の「給与所得の源泉徴収票」を、下記の住所へ郵送していただけますでしょうか。転職先での年末調整に必要なため、○月○日までにいただけると助かります。
送付先:〒000-0000 ○○県○○市……
すでに発送済み、または電子データでの提供をいただいている場合は、その旨を教えていただけますと幸いです。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
氏名/連絡先メールアドレス
2回目:1回目から1週間たっても返事がないとき
件名:【再送】源泉徴収票の送付のお願い(○○部・氏名)
○○株式会社 人事・総務ご担当者様
○月○日にお送りした、源泉徴収票の件でご連絡しました。その後の状況をお知らせください。
所得税法では、年の途中で退職した従業員に対し、会社は源泉徴収票を退職後1か月以内に交付する取り扱いとされていると理解しています。退職日が○月○日のため、すでにその時期を過ぎております。
○月○日までに、郵送または電子データでご対応いただけますでしょうか。ご対応が難しい場合は、理由と見込みの日付をお知らせください。
氏名/連絡先
2回目の文面では、期限を具体的な日付にして、「返事」を求めている点がポイントです。返事の内容が「いつ送る」でも「できない」でも、次の手が打てます。
それでも届かないときの動き方
2回目のメールにも返事がなければ、次の順で進めます。
- 経理や人事の代表番号に電話して、メールの件名と送信日を伝え、担当者名を聞く。通話後に「本日○時に○○様とお話しした内容」として、メールで要点を残す
- それでも動かないときは、会社を管轄する税務署か、お住まいの地域の労働局の総合労働相談コーナーに相談する。国税庁の資料では、源泉徴収票を期限までに交付しない場合などは、一年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象とされています(所得税法242条)。実際にそこまで進むことは少なくても、会社の側が事の重さを知らないだけ、という場合には、こうした制度の存在が伝わると動きやすくなります。ただし、この点を持ち出して相手を責めるような書き方は避け、淡々と事実と依頼を書くほうが、早く解決します
- どうしても入手できないまま確定申告の時期が来たら、税務署に事情を話して相談する。源泉徴収票がない場合の申告の進め方は、状況によって扱いが変わるので、自分で判断せず窓口で確認する
退職のときの揉め事が続いていて、会社とのやり取りそのものがつらいときは、一人で抱えなくて大丈夫です。弁護士への無料相談も選択肢のひとつです。
年内に再就職しないときの確定申告
年の途中で辞めて、そのまま年末まで再就職しない場合は、年末調整を受けられないことが多いです。国税庁のタックスアンサー(No.2665)では、年の中途で退職した人のうち、年末調整の対象になるのは限られたケースだけで、それ以外は対象にならないと説明されています(国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」)。
この場合、毎月の給与から天引きされた所得税が、年間の税額より多くなっていることがあります。先ほどの国税庁の資料にも、年の中途で退職して年末調整を受けなかった人で、その後その年中に他の所得がないことなどにより、源泉徴収された税額が年税額を超える人は、確定申告をすれば還付を受けられる、と書かれています。
還付を受けるための申告(還付申告)は、国税庁のタックスアンサー(No.2030)によると、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁「No.2030 還付申告」)。2月16日から3月15日の通常の申告期間を過ぎても慌てなくてよいということです。ただし、還付になるかどうかは、その年の収入や控除の状況によって変わります。ほかに収入がある場合や、フリーランスとして働いた場合などは、結果が違ってきます。
また、年内に再就職しなくても、翌年に入ってから納める住民税の通知が来ます。退職後の住民税の払い方は、別の記事でまとめています(退職後の住民税、払い忘れ・引かれ過ぎで慌てないために|やりがちな3つの失敗と、会社への確認メール文例)。
届いたら、その場で見ておく4か所
封筒を開けたら、保管する前に数字を見ておきます。間違いに気づくのが早いほど、会社も直しやすいからです。
- 氏名と住所:結婚や引っ越しで変わっている場合、古い情報のままになっていないか
- 支払金額:退職月までの給与とボーナスの合計が、手元の給与明細を足した額とおおよそ合うか
- 源泉徴収税額:毎月の明細で引かれていた所得税の合計と近いか
- 社会保険料等の金額:健康保険・厚生年金・雇用保険の天引き額の合計と、大きくずれていないか
数字が合わないときは、給与明細を手元に置いたうえで、経理に「支払金額が自分の計算と○○円違うようです。内訳を教えてください」とメールで聞きます。責める言い方にせず、確認の依頼として書くのがコツです。
なお、封筒が届いたあとに紛失した場合や、記載内容に誤りがあった場合は、会社に再発行や訂正の源泉徴収票を依頼することになります。そのときも、元の書類の写真を添えて、メールで頼んでおくと話が早く進みます。
たとえば、転職先の年末調整の締め切りが12月10日なら、11月30日までに届いていない時点で2回目のメールを出し、12月3日を回答期限にしておきます。そこまで済ませておけば、間に合わなかったとしても、「いつ請求し、どう動いたか」が記録に残り、転職先にも説明しやすくなります。
転職先に伝えるときの文面は、短くて構いません。「前職の源泉徴収票を11月○日に請求しました。届き次第、すぐにコピーを提出します。年内に間に合わない場合は、年明けに自分で確定申告をする形で問題ないでしょうか」と送れば、総務の側も、年末調整に含めるか、本人の申告に任せるかを判断できます。
書類は届いたその日に、スマホで全体を撮影しておきます。原本は確定申告まで使うことがあり、郵便物の山に紛れて見つからなくなる人が少なくないためです。保管場所も「クリアファイルの青」のように具体的に決め、チェックリストの最後の項目と一緒に済ませてしまうと、あとで探さずに済みます。
やることチェックリスト
- 退職日の1か月後の日付を、カレンダーに「源泉徴収票の確認」として入れた
- 自宅の郵便、会社からのメール、給与明細のマイページ、退職時にもらった書類を見直した
- 転職先の年末調整の締め切りを確認し、「届き次第提出します」とメールで伝えた
- 人事・経理に、退職日・氏名・送付先・希望日を書いたメールで請求した
- 1週間たっても返事がなければ、2回目のメールを送り、送信日を記録した
- 年内に再就職しない場合は、翌年の確定申告で還付になる可能性を、国税庁のサイトか税務署で確認した
- 届いた源泉徴収票は、写真を撮ってから、確定申告用に原本を保管した
まとめ
源泉徴収票が届かないのは、会社の担当が分かれていたり、電子交付になっていたり、単に後回しにされていたりと、悪意のない理由であることも多いです。それでも、期限は退職後1か月以内という目安があります。
やりがちな失敗は、日付を数えずに待つこと、転職先に具体的な期日を伝えないこと、口頭だけで頼んで記録を残さないことの3つでした。回避する手順は、退職日の1か月後に確認の予定を入れる、転職先にメールで期日を伝える、会社にはメールで請求して1週間後に再送する、の3つです。
退職をめぐって会社との関係がこじれていて、書類の請求も気が進まないときは、弁護士への無料相談も一人で抱えない選択肢のひとつです。結果は契約内容や証拠の状況で変わりますが、何が請求できて、何を会社に求められるのかを整理するだけでも、動きやすくなります。






