
上司からパワハラを受けた。訴えてやりたい。でも、訴えたら会社に居づらくなるだろうな。いっそのこと転職しようか。転職する時に訴えてやろうかな。
会社でパワハラを受けたら、訴えたいと思うこともあるでしょう。しかし、訴えるというのは簡単なことではありません。証拠集めは大変ですし、弁護士費用もかかります。
この記事では、パワハラを訴える流れを簡潔に説明します。そのうえで、パワハラを訴えることのデメリットとメリット、さらにはベストな対処法を紹介します。
※この記事は3分程度で読み終わることができます。3分後、あなたはパワハラに対してどう対処するべきなのか明確にわかっているはずです。
パワハラで何を訴える?
「訴える」といっても、民事訴訟と刑事訴訟とがあります。パワハラで訴えるというのは、まずはこのどちらなのか考えてみましょう。
民事訴訟で訴えるというのは、パワハラによって精神的苦痛を受けたため慰謝料を請求するということです。
一方、刑事訴訟で訴えるというのは、パワハラ加害者に対して刑事罰を科すということです。パワハラで考えられる刑事罰はいろいろあります。考えられるものをいくつか挙げておきます。
- 傷害罪:15年以下の懲役、または50万円以下の罰金(刑法204条)
- 暴行罪:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金(刑法208条)
- 脅迫罪:2年以下の懲役、または30万円以下の罰金(刑法222条)
- 侮辱罪:拘留または科料(刑法231条)
なお、刑事訴訟で刑事罰が確定しても、慰謝料などは得られません。慰謝料をとるためには民事訴訟で勝つ必要があります。
パワハラを訴える流れ
では、パワハラを訴える流れを簡単に説明します(慰謝料請求が可能な民事を想定しています)。
- パワハラを受けた証拠と、パワハラにより被害を受けた証拠の両方が必要
- 前者は録音、写真、メール、メモ、時系列表など
- 後者は病院の診断書など
- 相談しても改善されなかった場合は有利な証拠となる
- 相談時は録音必須
- 労働問題に強い弁護士に依頼する
- 弁護士費用は、相談料、着手金、報酬金、その他諸経費がかかる
- 相談料は、1時間あたり1~2万円程度だが、相談料無料の弁護士もいる
- 着手金は、請求額の8%ほど
- 報酬金は、慰謝料の10~20%と弁護士によって開きがある
- その他費用とは、書類作成費用や交通費など
- 実際に訴える前に、弁護士を通じて会社側と交渉を行う
- ここで和解しすることがある
- 和解をすれば和解金が支払われる
- 地方裁判所の労働審判員らが間に入って話し合いを行う制度
- 裁判よりも簡易的で短期間で終わる
- ただし、結果に強制力はない
- 判決に不服で上告する場合は、そのぶん時間と弁護士費用がかかっていく
このように、パワハラで会社や加害者を訴えるというのは、なかなかに骨が折れます。
パワハラを訴えるデメリット
パワハラを訴えるデメリットはとても多くあります。以下、代表的な7つのデメリットを紹介します。
デメリット① 会社に居づらくなる
会社を訴えた社員は、会社の上層部にとっては煙たい存在。社内的には完全にブラックリスト入りです。
出世できる可能性は大幅に制限されるかもしれません。とはいえ裁判後、あからさまに評価や待遇を変えると問題になるので、そうとは気付かれないように真綿で首を絞めてきます。
また、同僚たちからも「会社を訴えたやつ」という目で見られ続けます。アウトロー的なイメージが付いてしまい(本当のアウトローは加害者なのに)、会社に居づらくなってしまいます。
デメリット② 転職活動に悪影響が出る
裁判は公になります。誰が誰をどのような内容で訴えたのか、誰でもわかります。
パワハラを受けた会社を辞めて転職しようとする際、パワハラで会社を訴えたということはマイナスに働く可能性があります。
どこの企業も訴えられることは嫌なもの。過去に会社を訴えたという事実があることで、そこまで過激な行動をとる人物=危険分子だと思われる可能性があります。
パワハラで受けた被害を訴えることが転職活動でマイナスになるというのは納得がいかないこともあるでしょうが、現実はこうなのです。
デメリット③ 敗訴することがある
パワハラを訴えても負けてしまうことは当然あります。しかも、結構高い確率で。
パワハラで訴えたときのポイントとなるのは証拠です。証拠をしっかりと集めることは、実はかなり難しいです。
また、パワハラの証拠をしっかりと揃えたとしても、パワハラと認定されるかどうかも怪しいです。パワハラについての判例の一部を簡単に紹介します。
- 指示通りに作業しなかった部下に対して、上司が「殺すぞ」と発言した。(大阪高裁平成25年10月9日)
- 部下のミスに対して、上司が大声で怒鳴り散らした。部下がミスの理由について説明使用したところ、「言い訳はいい」と返し、感情的に叱責し続けた。(大阪地裁平成26年4月11日)
- 懇親会の参加者全員の前で、上司が部下のことを「何をやらしてもダメ」「出来が悪い」など罵った。(大阪地裁平成19年11月12日)
- 上司の指示に対して、部下が反対意見を述べた。これに対して上司が「口答えするな」と怒鳴りつけた。(大阪地裁平成25年12月10日)
- 上司に反発する部下に対して、上司が「おい、おまえ」など荒い言動を用いた。(高松高裁平成18年5月18日)
- 上司が部下の勤務態度を改めさせるために、1週間のうち2回の業務命令を出して署名を求めた。(東京地裁平成25年9月26日)
もはやパワハラかどうかの違いが微妙すぎてわかりません。だからこそ裁判をするのですが。
裁判に負けてしまった場合は、お金も労力も時間も自尊心もその会社での将来も、すべてがダメージを受けてしまいます。
デメリット④ 弁護士費用が高い
パワハラを訴えた場合、被害の状況により請求できる慰謝料の額は変わってきますが、相場は50~100万円程度と言われています。
一方、かかる弁護士費用も数十万円以上。慰謝料と同額ぐらいになるケースもあるのです。
多大なリスクを背負ってパワハラ被害を訴えて勝ったのに、手にする慰謝料は雀の涙ということは普通にあり得る話です。
デメリット⑤ プライバシーが明らかにされる
裁判は公開の法廷で行われます。つまり一般人が傍聴(見学)することができます。プライバシーを知られたくないから非公開で裁判してほしい、という要求は受け入れてもらえません。
裁判に臨む人間にとっては不利益極まりない制度のように思えますが、これは裁判の公正な運用と裁判に対する国民の信頼を確保するという趣旨によるものです。仕方ありません。
これもパワハラを訴える側にとって、かなり大きなデメリットといえるでしょう。
デメリット⑥ 判決が出るまで時間がかかる
通常、裁判は3ヶ月~半年ほどかかります。もし1度の裁判で決着がつかなければ二審、三審へと進み、数年以上の歳月がかかることもあります。
3ヶ月~半年で終わったとしても、当事者からすれば相当長く感じることでしょう。勤務中であればその間は針のむしろ状態ですし、転職後であってもそれだけの期間、口頭弁論などで時間と労力を割かれるわけです。
デメリット⑦ 精神的に辛くなる
裁判をすると、精神的な負担が非常に大きくなります。
会社側は勝訴をするために、あなたの欠点を(重箱の隅をほじくるように)指摘してくるかもしれません。しかも傍聴者たちの前で。こんなストレス、耐えられます?
前述のとおり、裁判は長期戦。長い間、ストレスを感じ続けるというのは、精神的にとても辛いことではないでしょうか。
パワハラを訴えるメリット
ここまでは、パワハラを訴えるデメリットを紹介しました。それでは、パワハラを訴えるメリットには何があるでしょうか。
メリット① いくらかの慰謝料が入る
メリットの1つは、慰謝料が入るということです。弁護士費用が差し引かれますから、あまり手元には残らないかもしれません。
とはいえ少しでもプラスになれば、パワハラ行為に対して泣き寝入りしなくてよかったと思えるかもしれません。
メリット② 気分がスッキリする
パワハラで訴えられた会社は、名前が世間に知られることになります。憎き加害者側が、世間から「パワハラをする会社」と非難の眼差しを向けられるのです。企業イメージは地に落ちます。
このように、会社に対して仕返しをすることができて、気分がスッキリするというメリットがあります。
パワハラを受けたときのベストな対処法
パワハラを受けたときに訴えるべきか否か。上記を読んでいただいた賢明なあなたであればもうわかっているはずです。
そうです。パワハラを訴えることは、メリットよりもデメリットのほうがはるかに多いため、訴えるだけ無駄でしょう。
「金なんていらない!刺し違えてでも復讐してやる!」というような強い怨念を持っていない限り、訴えずに別の対処法を講じる方が賢明です。
では、別の対処法とはいったい何でしょうか。それは、速やかに転職することです。
はっきりいって、パワハラをするような上司がいる会社にいても、いいことはありません。ストレスは溜まり、会社を辞めたいと思い続けることでしょう。
会社の人事、労働組合、労働局に相談し、一時的にパワハラが改善されたとしましょう。それでも、会社に居づらい思いは残ってしまうでしょう。会社の体質によっては、会社に楯突いた要注意人物とみなされるかもしれません。
会社をパワハラで訴えれば、あなたは会社の敵そのものです。勝っても負けても裁判中も、居場所はなくなってしまいます。
ということで、パワハラを受けたらいつでも転職できるように準備を始めましょう。
まとめ|パワハラを訴えることはデメリットばかり!ベストな対処法は?
いかがでしたか? 上記を簡潔にまとめます。
- 民事で訴えて慰謝料を請求する
- 刑事で訴えて刑事罰を課す(慰謝料はもらえない)
- 証拠を集める
- 会社に相談する
- 弁護士に依頼する
- 弁護士を通じて交渉する
- 労働審判を申し立てる
- 会社と加害者を訴える
- 会社に居づらくなる
- 転職活動に悪影響が出る
- 敗訴することがある
- 弁護士費用が高い
- プライバシーが明らかにされる
- 判決が出るまで時間がかかる
- 精神的に辛くなる
- いくらかの慰謝料が入る
- 気分がスッキリする
- 速やかに転職する
パワハラ被害を訴えようと考えるのではなく、その時間を転職活動に充てましょう。その方が気持ちが楽になりますし、なにより明るい未来をつかみやすくなりますから。
とはいえ、いきなり転職というのはイメージが躊躇してしまいますよね。
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