フクロウ

サービス残業時間を計算したら、今月も20時間を超えている。普通に払ってもらえたら数万円になるはず。なんか悔しい。うちの会社ではサービス残業は当たり前だけど、他の会社はどうなんだろう。というか、サービス残業代を払ってもらう方法はないものだろうか。

サービス残業を行わせる会社は「ブラック企業」ですし、そこで渋々従っている労働者は「社畜」です。まったくもってひどい話。あなたは大丈夫ですか?

この記事では、サービス残業の実態と、サービス残業への対抗策を紹介します。「残業代をしっかりと払ってもらいたい」「そもそも残業をしたくない」という方にとって、すぐに活用できる内容です。

※この記事は3分程度で読み終わることができます。3分後、あなたはサービス残業を放置してはいけない理由とその対抗策が明確にわかっているはずです。

サービス残業は当たり前?苦しんでいる人たちの声

サービス残業をしている人たちは多くいます。そんな彼らの声をTwitterから拾ってみました。

昭和や平成初期からすれば徐々に減ってはきているものの、サービス残業に苦しんでいる労働者は多いです。

サービス残業は当たり前?実態は?

あらためて言うまでもなく、サービス残業とは、賃金が支払われない残業のこと。つまり、タダ働きということです。

会社のオフィス内の話だけではありません。帰宅途中に顧客からかかってきた電話に長時間対応したり、自宅に仕事を持ち帰ったりすることも、それに対する賃金が支払われなければサービス残業ということですね。

それでは、サービス残業の実態を見てみましょう。はたしてサービス残業は当たり前のことなのでしょうか。

サービス残業の実態は?

日本労働組合総連合会の「労働時間に関する調査」より以下、サービス残業の実態を引用します。

サービス残業は当たり前?サービス残業経験のある労働者の割合は?

まず、サービス残業をしたことがある人は、どれほどの割合なのでしょうか。

労働者全体の42.6%がサービス残業経験あり、57.4%がサービス残業経験なしでした。半分とはいかないまでも、かなり高い割合でサービス残業が行われていることがわかります。

労働者を正規労働者と非正規労働者とに分けてみると、サービス残業経験の割合は次のとおりです。

  • 正規労働者:51.9%がサービス残業経験あり
  • 非正規労働者:30.5%がサービス残業経験あり

非正規労働者にはパート・アルバイトといった時間給労働者が含まれます。そのため、非正規労働者はサービス残業経験が比較的少ないのでしょう(とはいえ、30.5%というのは決して低い割合ではありませんが。

サービス残業時間は月平均何時間?

続いて、サービス残業が月平均何時間ほど行われているのか見てみましょう。

まずは全体の話から。サービス残業経験者全体のサービス残業時間は月平均16.7時間です。

正規労働者と非正規労働者とでは、サービス残業時間に開きがあります。

  • 正規労働者:20.0時間/月
  • 非正規労働者:9.5時間/月

前述のとおり、非正規労働者は時間給であるケースが多く勤務時間に対する意識が強いため、サービス残業時間は正規労働者よりも少なくなっています。

続いて、正規労働者のサービス残業時間を役職別に見てみましょう。

  • 一般社員:18.6時間/月
  • 主任クラス:19.6時間/月
  • 係長クラス:17.5時間/月
  • 課長クラス:28.0時間/月

もともと20時間程度もあるサービス残業が、課長クラスになるとさらに跳ね上がっていますね。中間管理職、つらいですね。

業種別サービス残業経験者の割合

実は、サービス残業が多い業界とそうでもない業界とがはっきりとわかれています。ネットリサーチ「ディムスドライブ」のデータを引用して説明します。

まずはサービス残業経験のある労働者割合が高い業界から。

サービス残業経験のある労働者割合が高い業界
  1. 教育・学習支援業(学校教育):69.0%
  2. 学術研究・専門・技術サービス業:57.1%
  3. 土木・建築業:51.7%
  4. 不動産業・物品賃貸業:51.4%
  5. 宿泊業・飲食サービス業:50.0%
  6. 教育・学習支援業(塾教育等):50.0%

これらの業界は、労働者の半数以上がサービス残業を経験しています。ブラック業界といっても差し支えないでしょう。

続いて、サービス残業経験のある労働者割合が低い業界です。

サービス残業経験のない労働者割合が低い業界
  1. 製造業:30.3%
  2. 情報通信業:31.3%
  3. 運輸業・郵便業:36.9%
  4. 公務員:37.8%

サービス残業経験のない労働者割合30%台以下をピックアップしました。社員の3分の1がサービス残業をしているのですからホワイト業界とはいえませんね。オフホワイトといったところでしょうか。

あなたが働いている業界はどうですか?

サービス残業でいくら損している?

サービス残業でいくら損をしてしまっているのか。月給制の労働者の場合、具体的にイメージがつきづらいですよね。ということで、例として【月給30万円、基本労働時間160時間、サービス残業時間20時間】と仮定し、いくらサービス残業が支払われていないのか計算してみます。

  1. 月給を時給に直す:月給30万円÷160時間=時給1,875円
  2. 残業時間給を出す:時給1875円✕割増1,25=時給2,343円
  3. 残業代はいくら?:時給2343円✕20時間=46,860円

このように、毎月5間年近くのサービス残業代が支払われていないという計算になります。今よりも月給が5万円近く増えることをイメージしてみてください。サービス残業は当たり前なんて思って泣き寝入りしていては、もったいないですよね。

サービス残業はどのように行われているのか?

サービス残業にはどのような形態があるのでしょうか。代表的なものを6つ紹介します。

サービス残業の形態1 仕事の持ち帰り

仕事を持ち帰って自宅で働くというのは、その時間の給与が支払われない限りサービス残業です。

何時間働いても実態がより見えづらいだけでなく、情報漏えいのリスクも伴うため最悪のサービス残業です。

仕事とプライベートを切り分けることができなくなり、ストレスが蓄積していきます。長く続くようだと、心身が壊れてしまいます。

サービス残業の形態2 時間外の電話・LINE・メール

顧客・取引先・上司などに対して勤務時間外に連絡対応をし、その時間の給与が支払われていなければサービス残業です。

顧客や取引先に対して営業時間=対応時間をあらかじめ伝えておいたとしても、それを無視して携帯電話に直接連絡が入ってくる場合もあるでしょう。

また、パワハラ気味の上司であれば、勤務時間外でも必ず電話に出るよう強く要求してくるかもしれません。

こういった勤務時間外の連絡に対して応答しない・返信しないということで、後日不利益を被るかもしれない。だから嫌々ながら応じなければいけない。しかも無給で。

こんなサービス残業も嫌ですよね。

サービス残業の形態3 タイムカード打刻後の残業

定時にタイムカードを打刻し、そこから残業をスタートするという風習がある職場もあります。打刻後の残業代は支払われません。サービス残業の常套手段です。

こういった職場の状況において、上司は黙認する場合と注意する場合とがあります。黙認する場合は、事の重大さに気付いていないということ。注意する場合は、後々問題になった際に「注意はした」と言い逃れできるようにするための保険としてです。

いずれにせよ、タイムカードを不正に運用し、社員に支給する残業代を奪っているということにはかわりありません。

サービス残業の形態4 15分、30分などの残業単位

残業時間の単位を30分や1時間とする職場があります。例えば15分単位の場合、14分間残業をしても残業代はなし。30単位の場合、29分間残業しても残業代はなしです。

このように残業時間の単位を長めにとることで、サービス残業を発生させようという姑息な手法です。

労働基準法には、1分単位の計算との記載があるのですが…

サービス残業の形態5 テレワーク

自宅など会社以外の場所で働くテレワーク。一見すると気楽にも思えますが、実はサービス残業の温床になっているのです。

テレワークの場合、会社側は勤務の実態を把握することが難しいため、「テレワークでは残業は認めない」とはじめから明言している企業は非常に多いです。

また、「テレワーク時に残業をする場合は上司の許可を事前に得なければならない」という縛りを課しているケースも。(上司に監視されていない)自宅での仕事ということから、労働者側は残業の申し出がしづらく、結果、サービス残業をせざるを得ないということも。

サービス残業の形態6 名ばかり管理職

労働基準法によって管理監督者という存在が定められています。管理監督者とはその名のとおり、業務の管理・監督を行う者。そして管理監督者は、残業代は発生せず、法定休日もないのです。

これを悪用して、仕事の実態は管理・監督ではないにもかかわらず、残業代を払わないことを目的に肩書だけ管理職にする「名ばかり管理職」を取り入れる会社が多くあります。

「肩書は付いたけど仕事は変わっていない」「課長になったのに時給計算したら新入社員並みだった」などということがあれば、名ばかり管理職の可能性が高いです。

サービス残業はなぜ発生する?

このようなサービス残業は、そもそもなぜ発生するのでしょうか。会社側の事情と労働者側の事情、それぞれについて簡単に紹介します。

サービス残業をさせる会社側の事情

サービス残業をさせる会社側の事情は3つあります。

サービス残業をさせる会社側の事情1 利益追求に偏った思考

残業代は割増です。通常の1.25倍の金額になります。会社としては正直痛いです。そこでサービス残業というタダ働きをさせようと考えるのです。

つまり、会社側は労働者を奴隷として見ているということです。嫌なら辞めろ的な。完全にブラック企業の発想ですね。

サービス残業をさせる会社側の事情2 コンプライアンス意識の薄さ

サービス残業が社内で当たり前になってしまい、風土化している会社もあります。

定時になっても誰もデスクから離れようとしない。定時にタイムカードと押そうものなら「今日は随分と早いね」などといぶかしがられる。なんだそれ?

たしかに昭和の頃はサービス残業は当たり前だったかもしれません。しかし、ワークライフバランスが叫ばれる現在では通用しません。

それすらわからず、あるいは目を向けずに、旧態依然とした会社に先はありません。

サービス残業をさせる会社側の事情3 業務量の誤認

サービス残業をさせる会社は、従業員の業務量を誤認している可能性があります。

例えば、かつてある従業員が、仕事を持ち帰って自宅でも作業していたとします。残業代は支払われていませんからサービス残業ですね。

この仕事を、他の人が任されたとします。仕事量的にサービス残業をしなければ終わらない分量。しかし会社側はそのことを把握できておらず、定時内の業務で完遂できると思いこんでいるとしたらどうでしょう。

定時で仕事が終わらない⇒自宅に持ち帰る(サービス残業)というような働き方をしない限り、「仕事が遅い」と評価されてしまうでしょう。

このように、会社側が業務量を正確に把握できていないことにより、サービス残業が人知れず発生していることもあるのです。

サービス残業を自らする労働者側の事情

サービズ残業を自らする労働者側の事情は3つあります。

サービズ残業を自らする労働者側の事情1 評価を得るため

長時間労働やサービス残業をすることが当たり前と思っている会社があります。それに従わなければ評価を落とされる。だからダラダラとサービス残業せざるを得ないということですね。

また、サービス残業をすることで、会社に残業代という負担をかけずに多くの労働時間を作りだすことができます。これにより仕事の量あるいは質が向上する可能性があり、結果的に評価が上がるということも考えられるでしょう。

このように、高い評価を得る、あるいは評価を落としたくないためにサービス残業をあえて行う労働者はいます。

サービズ残業を自らする労働者側の事情2 サービス残業ありきのスケジューリング

サービス残業が常態化していると、定時までに仕事を終らせるという意識が弱まります。仕事を、サービス残業ありきでスケジューリングするようになってしまうのです。

サービス残業ですから、仕事の時間が多少長くなっても痛みはありません。よって、非効率に長時間ダラダラと働いている労働者に対しても、強く咎めることはないでしょう。

このように、サービス残業をする風潮が、従業員側の働き方によって強化されてしまうこともあるのです。

サービス残業は違法行為!当たり前なんかじゃない!

サービス残業という名のタダ働きは、言うまでもなく違法行為です。

労働基準法の37条によると、「時間外労働、休日に労働した場合は割増賃金を支払わなくてはならない」とされています。

さらに、悪質な違反の場合には「懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金」という刑事罰まで課されることも。サービス残業が当たり前などということは決してないのです。

実際、サービス残業に関しては、数々の判例や労基署からの是正勧告があります。いくつか例を挙げます。

すき家
  • 総額数億円に登る未払い賃金(割増残業未払い)があった
  • 労働基準監督署による是正勧告あり
ワタミ
  • 賃金を30分単位で計算(労働基準法では1分単位)
  • 労働基準監督署による是正勧告あり
  • 従業員に1,200万円支払い
マクドナルド
  • 店長は管理監督者ではないとされた(名ばかり管理者ということ)
  • 残業代支払い
野崎徳州会病院
  • 日常的に行われていたサービス残業を、黙示の残業命令と認定
  • 残業代支払い

サービス残業を当たり前と考えている企業は、このように訴えられて社会的信用を損なってしまうかもしれないのです。

サービス残業への対抗策

自分自身が原因でサービス残業をしている場合には、自分の意識を変えるなり仕事の効率を上げるなりして改善すればいいだけの話です。

問題は、サービス残業が会社・職場に起因している場合。このようなサービス残業という現状を改善したいという場合、いくつかの対抗策があります。以下、紹介します。

対抗策1 労働条件相談ほっとラインに連絡する

厚生労働省の機関です。

無料で電話相談に応じてくれます。告発をしてくれるわけではありませんが、具体的なアクションプランを一緒に考えてくれます。

労働条件相談ほっとラインのWebサイトはこちら

対抗策2 人事に相談する

サービス残業が社内の一部の職場のみで行われている場合には、人事への相談が有効な場合があります。

特に、社内報などで人事や労務が記事を載せているような企業であれば、人事が機能している可能性が高く、サービス残業の改善が期待できます。

一方、会社全体でサービス残業が常態化している場合は、社内の人事では改善は難しいでしょう。

対抗策3 労働基準監督署に告発する

労働基準監督署は会社の労働基準法違反への対処をする行政機関です。

労働基準監督署にサービス残業を告発することにより、実態の調査、是正勧告、悪質な場合は経営者の逮捕などまで動いてくれる可能性があります。

流れとしては、労働基準監督署にサービス残業を申告⇒実態を調査から始まります。

調査の結果、サービス残業という違法行為が認められれば、労働基準監督署は会社に是正勧告をします。再三の是正勧告に会社が応じない場合は悪質な違法行為であるとして、経営者が逮捕されることも。

ポイントは、労働基準監督署による調査です。労働基準監督署の調査員が会社を訪問し、タイムカードや帳簿、責任者へのヒアリングなどが行われます。会社としてはかなりのプレッシャーを感じることでしょう。

対抗策4 転職する

サービス残業について相談・告発するというのは、なかなか骨が折れるうえ、なかなか動いてもらえないという苛立ちを覚えることもあるかもしれません。

また、仮に改善できたとしても、会社経営陣を敵に回すことになるかも。一応、労働基準法により会社側が告発者に対して不利益を与えることは禁じられていますが、表面には出てこない嫌がらせなどいくらでもできますし。

こういったリスクを犯してまでサービス残業の改善を図りたいと思わないのであれば、いっそのこと転職を考えてみるのもいいでしょう。

前述のとおり、サービス残業を経験しているのは労働者全体の42.6%です。つまり、半数以上はサービス残業経験がない。サービス残業は当たり前なんかじゃないのです。

月数万円以上にも及ぶ多額の残業代を払ってもらえないようなブラック企業は辞めて、しっかりと残業代を払ってもらえる企業へ転職するというのは、ある意味まっとうな行動だと思いますよ。

まとめ|サービス残業は当たり前?実態と対抗策を紹介

サービス残業を当たり前として毎月数万円以上にも及ぶ残業代を諦め、タダ働きをし続けるのか。それとも、サービス残業を改善するべく動くのか。

個人的には、サービス残業をさせるような違法会社など、長期的に考えれば勤務するだけリスクしかないと思います。

毎月数万円の給与が損なわれるだけではありません。

あなたがサービス残業改善に対するアクションを起こさなかったとしても、社内の誰かが告発をするかもしれない。経営者が逮捕だってありえます。それにより社会的信用が失われ、業績が悪化するかもしれない。そんな会社は完全なブラック企業ですし、ドロ船です。

サービス残業は非常に大きな問題です。身の振り方を含め、どのような対抗策を講じるべきか考えてみましょう。

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